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2020年10月16日(金)

“推薦従う義務ない”政府文書

学術会議前会長ら知らず

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(写真)2018年(平成30年)11月13日付となっている文書。「内閣総理大臣に…推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」などの記述がある

 日本学術会議会員の任命拒否問題で、首相は会議の推薦通りに会員を任命する義務はないとする政府文書について、当時の会長ら幹部が文書の存在を知らされていなかったことが、複数の関係者の話で分かりました。

 問題の文書は2018年11月13日付で、「内閣府日本学術会議事務局」名で作成されています。野党合同ヒアリングで野党側の求めに応じて6日に公開されました。

 この文書は首相に「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」と記述。内閣府は、当時この文書を内閣法制局に見せ了承をもらったと説明しています。法制局は今年9月2日にも内閣府から問い合わせがきたため、文書を踏まえて「(了承に)変更はない」と回答したといいます。

 関係者によると、当時の山極寿一会長は在任中、政府から文書を含めこうした解釈を伝えられたことは、一切ありませんでした。

 日本学術会議法は同会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(第7条)と定めています。従来、政府はこの任命について「政府が行うのは形式的任命にすぎません」(1983年5月12日、参院文教委員会、中曽根康弘首相)と答弁。同会議から推薦された候補は拒否しないという法令解釈が定着していました。

 同会議事務局が18年に作成したとする文書は従来の答弁を事実上、覆しています。

 取材に応じた当時の幹部は「今回、公表されるまで文書を知らず、報道で見て驚いた。当時もしこの文書が会員の間に出ていたら、かなりの問題になっていたと思う。学術会議の会員からすると、あの文書は正式の会議で公認されておらず、共有もされていないので何ら拘束力がない。政府があれを根拠に首相は任命拒否できるというのは全く筋違いだ」と批判します。

 同会議事務局は文書を当時の会長らに見せたのかという本紙の質問に、「確認中」と答えています。(岡素晴、丹田智之、安川崇)


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