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2020年10月11日(日)

主張

WFPに平和賞

飢餓と紛争なくす国際協力を

 2020年のノーベル平和賞が国連の世界食糧計画(WFP)に贈られることが決まりました。武力紛争地域や災害被災地に食料を届け、平和な世界を築くために貢献してきた活動が評価されました。戦争、紛争の停止と飢餓の根絶に向けた国際協力は新型コロナウイルスの感染を収束させる上でも不可欠です。

食料支援と平和で役割

 WFPは1961年に国連の食料支援機関として創設されました。2019年にはイエメン、シリア、コンゴ民主共和国など88カ国の1億人近くを支援しました。コロナ危機のもとで「ワクチンを手にするまでは食料が混乱に対する最良のワクチンだ」とのスローガンを掲げて活動しています。

 ノーベル賞委員会は授賞理由の中でWFPの活動について「食料の安全保障を平和づくりの手段とするための多国間協力で主要な役割を担っている」「飢餓が戦争、紛争の武器として使われることを防ぐため国連加盟国の結集に貢献した」と高く評価しました。

 世界の食料不足は近年悪化しています。国連によると、19年には1億3500万人が最低限の食料さえ入手困難な状態です。コロナ危機や異常気象によってさらに深刻化する恐れが濃厚です。直接の対策をとらない限り、2億6500万人が危機的な飢餓に直面するとWFPは警告しています。

 戦争は飢餓を引き起こし、飢餓は戦争の原因となります。食料不足は、武装勢力が食料と引き換えに子どもを含めた民間人を徴兵することにも利用されています。悪循環を断つために食料支援は欠かせません。

 ノーベル賞委員会が「国際連帯と多国間協力の必要性がかつてなく顕著になっている」と強調したことは注目されます。トランプ政権の「米国第一主義」と米中対立が国際協力に障害を持ち込んでいることへの戒めといえます。

 コロナ危機の収束に向けた国際社会の連帯は一歩ずつ前進しています。4月には国連総会が決議「新型コロナウイルスとたたかう地球的連帯」を採択しました。5月には世界保健機関(WHO)総会がコロナ対応についての決議を全会一致で採択しました。7月には国連安全保障理事会が、国連事務総長の提起から3カ月を経て、世界に即時停戦を呼びかける決議を全会一致で採択しました。

 WFPへのノーベル賞授賞もこの流れの中で世界に連帯を促すメッセージです。武力紛争の当事者は安保理決議とともにWFPへの授賞を真剣に受け止めることが求められます。

公正な新しい世界めざす

 飢餓の根絶は、国連が2030年までに達成をめざす「持続可能な開発目標」(SDGs)の一つです。貧困の根絶、ジェンダー平等、気候変動対策など17の目標を掲げています。コロナ危機を克服した後の世界は、新自由主義が支配する古い世界であってはなりません。SDGsを指針に、より公正な新しい世界を築くことがいま迫られています。

 日本政府は世界の紛争に積極的に停戦を働きかけていく必要があります。経済援助では日本の利益ばかりを優先させた選別をやめ、SDGsの達成をはじめ途上国国民の生活向上に資する人道支援こそ強めるべきです。


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