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2020年10月9日(金)

主張

学術会議人事介入

「学問の自由」脅かす解釈変更

 日本学術会議が新会員として推薦した105人のうち6人の任命を菅義偉首相が拒否したことは、学問の自由を保障した憲法を踏みにじる大問題です。政府は7日、8日に衆参の内閣委員会で行われた質疑で「首相が会議の推薦通りに任命する義務はない」との立場からの答弁を繰り返しました。その根拠にしているのは、政府が2018年に日本学術会議による会員の推薦と首相の任命の関係をまとめたとされる見解です。しかし、同見解は、それまでの政府の法解釈と明らかに矛盾しています。「解釈変更ではない」とする政府のごまかしは通用しません。

83年の政府見解は明瞭

 見解は、内閣府日本学術会議事務局が作成した18年11月13日付の「日本学術会議法第17条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命との関係について」と題する文書に記されています。

 日本学術会議法(日学法)は17条で「日本学術会議は…優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し…内閣総理大臣に推薦する」とし、7条で「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定めています。

 会員の選任方法を公選制から推薦制に変えた日学法改定案の審議の際、当時の中曽根康弘首相は、「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と述べ、それ故に「学問の自由独立というものはあくまで保障される」と強調していました。(1983年5月12日、参院文教委員会)

 「形式的な任命」とは何か。当時の担当大臣、丹羽兵助総理府総務長官は「推薦された者をそのまま会員として任命する」「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」「政府が干渉したり中傷したり、そういうものではない」(同年11月24日、同委員会)と明言しています。

 当時の政府が、「学問の自由」を保障するため首相は会員を推薦通り任命しなければならないとの見解を持っていたことは明瞭です。

 さらに、丹羽総務長官は、日本学術会議が国の機関として首相の所轄下に置かれ、経費も国庫負担であることを認めつつ、「政府の指揮監督というようなものは受けることなく独立してその職務を行う」と明確に答弁しています。(同年5月12日、同委員会)

 「内閣総理大臣は、会員の任命権者として、日本学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができる」という2018年の見解を導き出す余地はどこにもありません。

首相は明確に説明せよ

 18年の見解が、公務員の選定・罷免を国民固有の権利とした憲法15条を持ち出して「内閣総理大臣が、会員の任命について国民及び国会に対して責任を負えるものでなければならない」とし、「日学法第17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」としているのは重大です。

 首相が今回、6人の任命を拒否した理由が「国民と国会に責任を負えない」からだとするのであれば、中傷以外の何物でもありません。それこそ、首相には国民と国会に対し明確な説明をする義務があります。「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保する」ためなどとごまかし続けることは許されません。


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