2020年10月9日(金)
形式的任命は学問の自由のため
学術会議介入
83年首相答弁引き田村議員 政府「不適当」理由示せず
「憲法に抵触する重大問題だ」―。日本共産党の田村智子議員は8日の参院内閣委員会で、菅義偉首相が日本学術会議の推薦会員6人の任命を拒否した問題を真正面から批判。日本学術会議をめぐる歴史的経緯や国会答弁を引きながら、憲法15条を根拠に日本学術会議の会員選定に介入する政府のやり方の違法性を浮き彫りにしました。(論戦ハイライト)
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政府は、任命拒否を「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とした憲法15条をあげて正当化しています。
田村氏は、憲法15条による任命拒否の根拠として内閣法制局から高辻正己法制局長官(当時)の国会答弁(1969年7月24日)を示されたと述べた上で、ここで高辻長官は「(任命拒否は)明らかに、法の目的に照らして不適当と認められる場合」に限るとしていることを指摘。「今回、任命されなかった6人が、日本学術会議法の目的に照らして明らかに不適当と判断した理由は何か」と迫りました。ところが、内閣府の大塚幸寛官房長は「人事とからむので答えは差し控える」と答弁を拒否し、何も理由を示せませんでした。
田村氏は「国民は(任命されなかった6人が)明らかに不適当と思っていない」「国民主権にかかわる問題だ」と述べ、答弁を拒否する政府の姿勢を厳しく批判。「任命拒否があり得るという法解釈を示す文書はあるのか」とさらにただすと、内閣法制局の木村陽一第一部長は「私が知る限り、見当たらない」と答えざるをえませんでした。田村氏は「憲法15条を持ち出せば、持ちだすほど日本学術会議と(会員候補)6人を侮辱することになる。やめるべきだ」と強調しました。
さらに、田村氏は、1983年の日本学術会議法改定の際の国会答弁を丹念に引きながら、首相の任命は「形式的任命」で裁量権はないとされてきたことを指摘。当時の中曽根康弘首相が「政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障される」と答弁したこともあげ、「『形式的任命』は(憲法23条の)『学問の自由』の保障そのものにかかわる」と指摘しました。
田村氏は、「形式的任命」との83年の答弁は、核実験反対や核兵器廃絶など政府の見解と異なる活動をする日本学術会議への攻撃が行われたために、国会審議の中で繰り返しただされ確認されてきたものだと指摘。安倍政権が立憲主義を踏みにじる安保法制を強行し、多くの科学者が憲法違反との見解を示して以降、日本学術会議に対して「形式的任命」とは異なる対応が始まったこともあげ、「学問の自由が脅かされている。それは科学者だけでなく、国民全体の言論の自由をも脅かす道につながる」と警鐘を鳴らしました。