2020年10月8日(木)
コロナ対策包括法案 トランプ氏協議停止
国民の苦境より大統領選
【ワシントン=遠藤誠二】トランプ米大統領は6日、議会共和・民主両党、ホワイトハウスの間で続いていた新型コロナウイルス対策・包括救済法案の協議を11月3日の大統領選後まで停止すると発表しました。自身の選挙戦対策を優先させ、同ウイルスの感染拡大で経済的な打撃を受けている企業・国民を犠牲にする行為です。
トランプ大統領は6日、「大統領選が終わるまで、私の議員らに協議を停止するよう指示した」「大統領選での私の勝利の直後に、勤勉な米国の労働者と中小企業に焦点をあてた大規模な刺激策法案を通過させる」とツイッターに投稿しました。
同法案をめぐっては、予算規模等をめぐり、共和・民主両党とトランプ政権との協議が難航。下院は1日、総額2兆2000億ドル(約230兆円)規模の法案を民主党の賛成で可決しましたが、共和党の反対で上院で採択される見込みはなく、民主党のペロシ下院議長とムニューシン財務長官との協議も物別れに終わりました。
9月末が期限の既存の救済措置もあり、従業員の給与を補償する救済プログラムが終了した航空業界では、大手アメリカン航空、ユナイテッド航空が、救済法が成立しないなら3万2000人規模の人員削減を行うと発表しました。
米国は、大恐慌以来といわれる経済的苦境が続いており、超党派での包括法案を早期に実現させることが求められています。しかし、トランプ大統領は、この法案を人質にして大統領選に臨む姿勢を表明しました。
ペロシ下院議長は6日、「共和党の議員すべてと共謀し、国家を代償に自分自身を最優先させるという大統領の本性が再度、現れた。彼は新型コロナウイルスとたたかう意思のないことを示した」と痛烈に批判しました。