2020年10月6日(火)
主張
菅政権の改憲布陣
憲法破壊の継承・加速を許すな
菅義偉政権での自民党の改憲体制が決まりました。党改憲推進本部長に衛藤征士郎・元衆院副議長が起用され、同本部長だった細田博之・元幹事長は衆院憲法審査会長に就きます。党役員では、改憲に熱心な下村博文政調会長と佐藤勉総務会長がすでに就任しています。安倍晋三前首相の改憲路線の継承を掲げる菅首相(党総裁)の意向に沿って推進する布陣です。民意に逆らい破綻した「安倍9条改憲」に全く反省せず、加速しようという企ては許されません。「安倍=菅改憲」を断念に追い込む世論と運動を広げることが重要です。
「まい進する意思表示」
細田氏は、安倍前首相の出身派閥の細田派の領袖です。衛藤氏も同じ派閥で、党改憲推進本部顧問をつとめていました。細田氏は2018年に同本部長として、安倍氏が17年に提起した自衛隊を9条に明記する案など4項目を党の改憲案にまとめました。両氏の人選について佐藤総務会長は「改憲にまい進するという(菅首相の)意思表示だ」「不退転の決意の表れ」と語っています。
衆院憲法審査会長だった佐藤氏が総務会長に、党改憲推進本部長経験者で細田派所属の下村氏が政調会長に、それぞれ就任したのも露骨な“改憲シフト”です。下村氏は安倍氏の側近の一人です。
自民党改憲推進本部は、党内の七つの派閥全ての領袖を、顧問に起用する方針を検討しています。「挙党態勢」で「改憲実現に向け強い意欲をアピールする狙い」と報道されているように、異例ともいえる体制の強化です。
首相在任中に改憲の旗を振り続けた安倍氏は退任後も「菅政権でも取り組んでほしい」と求め、改憲に固執しています。憲法破壊の「安倍政治」を政権の要の官房長官として支え、推進したのが菅首相です。菅氏は、自民党総裁選公約に「憲法改正にも取り組みます」と明記し、「(改憲に)挑戦していきたい」と述べました。憲法審査会を動かす意欲を繰り返す姿勢は安倍前首相と全く同じです。
日本学術会議人事での菅首相の任命拒否は、憲法が保障する学問の自由を脅かす違憲行為です。憲法を踏みにじり、立憲主義を壊す強権的なやり方は、まさに「安倍流」の暴走です。
20年に改憲を実現するとした安倍氏の改憲策動は破綻しています。自民党の改憲案の国会提示も、野党の結束したたたかいと、国民の反対世論によって阻まれ続けています。自民党は、26日召集予定の臨時国会で、改憲のための国民投票法改定案の審議を突破口に、改憲論議を本格化させる思惑だといわれます。「安倍=菅改憲」を阻止する草の根からのたたかいをさらに強める時です。
断念に追い込む声を上げ
世論調査では、菅政権に期待する政策は「新型コロナへの対応」や「経済対策」が上位で、「改憲」を挙げる声は少数です。主権者が権力を縛る憲法の改定を、主権者が望んでいないのに推し進めるのは、最悪の立憲主義破壊です。
「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が野党に要望した総選挙向けの政策には「改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす」と明記されました。市民と野党が力を合わせて改憲を阻止し、政権交代を実現することが急務です。