2020年9月30日(水)
現金授受 生々しく
「人目があるから早く収めて」
河井買収事件 公判から
週2~4回の急ピッチで続いてきた、昨夏参院選をめぐる大型買収事件の公判。元法相で衆院議員の河井克行被告と、妻で参院議員の案里被告=ともに自民離党=から現金を受け取った地元首長や議員、元選挙スタッフらが次々と出廷し、現金授受のやりとりなどを具体的に証言しています。(取材班)
昨年4月に案里被告から現金30万円を受け取った、平本徹・広島県議の妻。夫の選挙の演説会で応援弁士を務めた案里被告を、終了後に会場から車まで送った際、現金を渡されたと証言しました。
押し返したが
「車のそばで案里さんが『奥さん、これを』と封筒を差し出した。自分は『いただけません』というつもりで手を出してお返しする形をとったが『奥様、人目があるから早く収めて』と言われ、返しようがなく受け取ってしまった。自宅で夫に渡すと、『なぜ受け取ったのか』と強く叱責された」
妻は法廷で声を震わせて証言。すすり泣く場面もありました。
同4月に克行被告から20万円を受け取った、同県安芸太田町の小坂真治・前町長はこう証言しました。
「自宅を訪れた克行さんとテーブルで話した。帰るころ、克行さんが『これを』と言って白い封筒をテーブル上に差し出した」
「私は『受け取るべきでない』との思いで『いやいや』と言って封筒を押し返したが、克行さんは『まあまあ』と押し戻してきた。2、3回繰り返し、段々声が大きくなってきたので、ここは私が引き受けようと思い、押し返すのをやめた」
断ろうとした、と語る証人がいる一方、選挙の際に現金の授受があることが前提であるかのように語った証人もいます。
組織票の手配
地元議員で最高額の計200万円を、3回に分けて受け取った奥原信也県議。
弁護士 なぜ現金を受け取ったか。
奥原議員 一般的に政治の世界では、自分が応援している人が現金を持ってきたのにそれを返すと、選挙(の応援)をやめたと思われる。
弁護士 選挙の応援は現金の授受とセットなのか。
奥原議員 そういうことではない。
公職選挙法には現金を受け取る側も「被買収」として処罰する規定があります。弁護士から「犯罪とわかっていて受け取ったのか」と問われた同県議は、「その時は選挙で忙しく、深く考えず(受け取った)。今になって罪を犯したと反省している」と答えました。
自民党の選挙の「内幕」をうかがわせる証言も見られます。
奥原県議は、克行被告から選挙情勢が厳しいという話を聴き、「東京に本社がある大企業があるから、自民党本部から本社に声をかけてもらったらどうかという話をした」と証言。企業の組織票の手配について助言したともとれます。
元選挙スタッフの女性は、選挙区を回って支持を広げる「外回り」をした際、安倍晋三首相(当時)の秘書が応援に入り、一緒に行動したと語りました。
「『安倍総理の秘書と来ました』と言うと相手の反応がよかった。私が一人で回るよりもよく話を聴いてくれて、『応援する』と言ってくれる。克行さんにそう報告した」
克行被告が自身の弁護人全員を解任したため公判を開けず、16日からは手続きが分離され、案里被告のみの公判が続いています。