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2020年9月29日(火)

主張

香港安全法3カ月

国際社会の批判を受け止めよ

 中国の立法機関で強行された香港の「国家安全維持法」が即日施行されてから30日で3カ月になります。中国中央政府が直接指揮するもとで活動家の逮捕など民主化運動への弾圧が一段と猛威を振るい、教育や報道への介入も強まっています。その一方、香港市民の不屈のたたかいが続き、国際的な批判が高まっています。中国政府は真剣に受け止めるべきです。

中国の指揮で弾圧が激化

 国家安全維持法に書かれた犯罪は「国家の分裂」「政権の転覆」など抽象的で、どんな行為が犯罪にあたるかは当局の判断次第です。政府批判を最高無期懲役という重罪で封じ込めるのが同法の本質です。実際に施行後、言論や集会が禁止され、中国と香港政府に対する批判、異論がことごとく弾圧されています。

 8月10日には「リンゴ日報」創刊者の黎智英(れい・ちえい)氏、若者政党「香港衆志」元メンバーの周庭氏ら10人が国家安全維持法違反容疑で逮捕(後に保釈)されました。周氏は何が被疑事実なのかも告げられなかったと語っています。施行後、香港政府が「香港を取り戻せ」のスローガンを一方的に犯罪に指定したことも、権力の意のままに政府批判を処罰できる同法の性格を示しています。

 中国と香港当局は国家安全維持法以外の法規も使って民主化運動を根こそぎにしようとしています。24日には著名活動家の黄之鋒(こう・しほう)氏が、昨年、不許可集会に参加した容疑で逮捕(即日保釈)されました。警官隊が市民一般に見境なく暴力を振るったことも厳しく非難されなければなりません。

 香港の教育関係者は、中学、高校の教科書から「天安門事件」「民主化デモ」の写真や「三権分立」や「民主派」の言葉が削除されたと批判しています。当局の介入があったと指摘されています。国家安全維持法は、学校に「国家安全教育」を義務づけており、教育に対する権力の干渉を正当化した条項が早速執行されています。

 中国政府は国家安全維持法に基づいて香港の「国家安全維持委員会」に顧問を派遣し、出先機関の「国家安全維持公署」を設置しました。同署は香港の「国家安全維持業務」を指導、監督し、香港政府の管轄外の活動にあたる権限も持っています。中国は香港の「一国二制度」を踏みにじり、自由と民主主義の抑圧に直接手を下しています。社会主義と無縁の専制主義にほかなりません。

 香港市民の抗議行動は粘り強く続いています。6日に行われるはずだった立法会選挙を香港政府がコロナ危機を理由に1年延期したことに対しては、投票の権利を奪う行為と糾弾しています。

人権擁護は国際法の義務

 4日には国連の人権特別報告者ら7人が中国政府宛ての公開書簡で国家安全維持法を批判し、同法の見直しを要求しました。

 同法では「テロ」「国家分裂」「政権転覆」の定義があいまいで、表現の自由、集会・結社の自由など国際人権規約の自由権規約で認めた活動が犯罪視されると公開書簡は警告しています。中国政府は1998年に自由権規約に署名しており、人権擁護は国際法上の義務です。「内政問題」として国際社会の批判を拒否することは通用しません。国家安全維持法は廃止するしかありません。


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