2020年9月26日(土)
志位・小沢氏が「政権奪取宣言」
BS―TBS「報道1930」
「次の総選挙で絶対に政権交代を実現する」(小沢氏)
「次の総選挙で政権をとる」「共産党も含めて新しい政権をつくる」と宣言を(志位氏)
「次の総選挙で、政権交代を実現する」――。日本共産党の志位和夫委員長と立憲民主党の小沢一郎衆院議員が2人で出演する初めてのテレビ番組となった24日のBS―TBS「報道1930」。ハイライトは、野党連合による「政権奪取宣言」でした。
菅政権――“幹”の問題では「安倍政権の継承」と「自己責任」だけ
番組では、菅義偉内閣が打ち出した携帯電話料金引き下げ、不妊治療への保険適用の拡大、デジタル庁などの政策をどう評価するかがテーマになり、両氏は次のようにのべました。
小沢 個別の話を打ち出して、このこと自体が悪いわけではないですが、基本的な国の制度、雇用のあり方、社会保障、根本的な問題が横たわっているわけですよ。こういうたぐいのやり方は、一時的に国民に受けることがあったとしても、このパフォーマンスで政治を判断してはいけないと思う。ただ野党の方も、わかりやすいという意味で、思い切った政策、抜本的な骨太の政策を打ち出していかないといけません。
志位 携帯電話の値下げ、不妊治療の保険の問題などは、やる必要があります。ただこれらは、基本は部分(の問題)です。国の政治の“幹”になる問題については菅首相は二つしか言ってない。
一つは、「安倍政権の継承」です。安倍政権の最後はどうだったか。アベノミクス一つとっても、国民の暮らしには届かなかった。実質賃金がどんどん減り、非正規雇用が38%まで増加し、暮らしがどんどん苦しくなっていった。「森友・加計・桜を見る会」などの国政の私物化問題にすべてふたをする態度だった。コロナの問題でも、行き当たりばったりの対策をやって、結局、感染のコントロールができない。あらゆる点で行き詰まっているものを引き継ぐというわけですから、未来は出てこない。
もう一つ、菅首相が言っているのは、「自助・共助・公助」です。これが国家観だというわけです。なかでも「自助」を強調して、「まず自分でやってみる」と、「自己責任」を強調しています。
ところがこのコロナのもとで、みんなもう「自助」をやっていますよ。苦しいながらがんばって、何とか店を維持しようとして、それでもつぶれそうだという中小業者。雇い止めされて路頭に迷ってしまっている非正規労働者。そういう人たちに「まずは自分でやってみなさい」と言う。これは、政治としておかしい。
政治としてやるべき仕事は公助です。まず国民の暮らしをよくするための責任を果たすべきなのに、その姿勢が見えない。「自己責任」をこのコロナのなかで押し付ける政権でいいのかという本質的な問題が出ています。
“幹”のところは「安倍政権の継承」と「自己責任」の押し付けが政権の正体だということです。ですから、これはもう倒さなければならないと思います。
菅政権に対し、ますますの共闘の発展でこたえる
安倍政権から菅政権に代わって、野党共闘の意義が薄れてしまうことはないのかという司会者の問いに対して、両氏は次のように答えました。
志位 まったくそうは思っていません。(菅政権は)「安倍政権の継承」が最大の看板ですから。安保法制で集団的自衛権の行使に道を開いた。これもそのまま引き継ぐ。「敵基地攻撃」みたいな物騒なことまで言いだしている。疑惑もすべてふたをする。アベノミクスも継承という。アベノミクスの考え方というのはトリクルダウンです。大企業にもうけさせたら、いずれは国民の暮らしに及んでくると言ってきたが、及ばなかったわけですよ。暮らしを応援して経済を良くする道に切り替える必要があるのに、「自助」努力ばかりいう。私たちが一番批判した“幹”の部分は何ら変わっていない。むしろ新自由主義的な「自己責任」論を前面に出してきた。もっと暴走がひどくなるということもあります。私たちは、ますます共闘の発展でこたえなければなりません。
小沢 いま志位委員長が言ったように、安倍さんの政策を継承するといっているんですから、いまそこに並べられている安倍さんのおかしな、危険な、危うい政策というのは、みんな継承するといっているんですから。それが国民のためにいいはずはないんで、具体的になっていけばいくほど、現実に政権を担当していけばいくほど、国民の批判は募ると、私はそう思っています。
オール野党で一本化した首相指名選挙――政権交代が射程に入ってきた
臨時国会の首相指名選挙で志位氏が立憲民主党の枝野幸男代表に票を投じているシーンが映し出されました。枝野氏への投票のいきさつについて問われて、志位氏は、枝野氏の要請に受け、政権交代を連携して進めていくという立場を共有して、枝野氏に投票することにしたと述べました。「共産党が衆参の首相指名選挙で他の野党に票を投じるのは22年ぶりですが、本格的な共闘が前進するもとで政権交代を連携して進めようということで入れたのは今回が初めてです」と語りました。
松原耕二キャスター 日本共産党にとっては、ある種の歴史的な一票ですね。
志位 歴史的に初めてです。
それから、今回、大事なのは、共産党が入れただけではなく、野党が全部入れたことです。国民民主党も社民党も「れいわ」も入れました。碧水会や沖縄の風も入れました。オール野党で一本化しました。
衆議院では134票となった。あと100票増やしたら過半数です。山登りでいえば、アプローチをよじ登ってきて、いよいよ頂上が見えて、(最終キャンプから頂上をめざす)アタックだということです。ここから先が大変ですが、いよいよ政権交代、野党政権をつくるということが射程に入ってきたのが現状だと思っています。
小沢 2009年の総選挙で、自民党は280以上から120になった。民主党は120から300以上になったんです。(立憲民主党は)衆院で100以上ですから。(政権をとるための)基礎的な数字としてこの数字は十分な数字なんです。しかもオール野党が一緒になるということ自体が、とてもいいことなんですね。
自民党政治に代わる政治の展望――新自由主義からの転換を
野党として自民党政権に代わる展望をどう打ち出すか―。志位、小沢両氏は、新自由主義から転換する方向の重要性を語りました。
小沢 いま非正規(雇用)が40%。しかし、景気が悪くなって非正規社員がどんどん首切りされているでしょう。非正規を増やす政策をしたのは安倍政権です。それを菅さんも引き継ぐっていってるんだ。年金だって年を取ったらもらえるのか、という話になる。
安倍さんになって自助、自助努力、自己責任、(新)自由主義の考えのもとで、それが強調されてどんどん格差が広がってきたのが現実です。それを菅さんが引き継ぐと言うんだから国民のためになるはずがない。枝野さんに思い切った国民のための政策を打ち出してもらいたい。
志位 小沢さんから枝野さんに頑張ってほしいというお話がありましたが、最近、枝野さんとウェブで対談したときに、「おっ」と思ったことがあるんです。
(枝野さんは)コロナのもとで、「自己責任」を押し付ける新自由主義とは決別する、支えあいを大切にして公の責任をきちんと果たす政府にしていかなければならないということをおっしゃった。これは非常に大事なポイントで、非常に大きな対立軸だと思います。
コロナのもとで医療がたいへん脆弱(ぜいじゃく)だったということがわかりました。長年にわたり医療費をどんどん削り、病院経営を赤字になるかならないか、ぎりぎりまで追い込んできてしまった。そこにコロナがきて、病院経営が大幅な赤字に陥っています。それから、この間、保健所を削りに削って数を半分に減らしてきたから、矛盾が噴き出しています。
それから、非正規雇用をどんどん増やした。この30年間で20%から38%まで倍にしました。派遣労働、パート、アルバイトに置き換え、いまコロナで雇い止めが広がっている。
新自由主義というやり方で、競争万能、市場原理万能、効率優先で暮らしに大事なものをどんどん削ってきた。
そういうやり方はもう成り立たない。これを切り替えようじゃないかということで、立憲民主党と私たちの間でもかなり太い一致の方向が出てきました。その太い一致をベースにすれば、社会保障を切り捨てから抜本的拡充に切り替える。たとえば医療では医者の数をもっと増やす、介護や保育で働く人の賃金を上げる、労働法制についても、正社員が当たり前のルールにして、8時間働けば誰でも普通に暮らせる社会にする。そういう方向が当然出てくると思います。
ですから菅首相が進める「自助努力と自己責任の新自由主義の暴走」か、それともそれを抜本的に切り替えて、国民の暮らしを本当に守り、良くしていく責任ある政府をつくるのか――。この対決軸が、はっきり出てきたと思います。
議論のテーマは野党がどのように政権交代を実現するかになりました。「次の総選挙で政権交代を実現する」―。志位氏と小沢氏の熱い思いが重なりました。
小沢 次の次(の総選挙で政権交代)という人はいますが、野党は「次の総選挙で政権をわれわれはとる」、そして「われわれの主張を実現する」と(言うべきだ)。それが“次の次の選挙でもいい”なんていう野党がいますか。そんなことで、国民は受け入れないですよ。権力そのものが目標じゃないんです。だけれど政権をとらなければ自分たちの主張は実現・実行できないじゃないですか。
総選挙というのは、主権者・国民の意思を聞くところですから、そこで主権者・国民の支持を得る、何としても得るんだと。「今回はいいよ」「その次でもいいや」と言っていたんでは、とてもとても選挙にならない。
松原 国民にはもしかしたら、民主党政権のオペレーションの失敗の記憶があると思う。ただ、いまの国会の状況はよくない、ならば、まず伯仲であれば野党に入れようかな、政権交代までやるといやだな、と。その辺りは伯仲の方が、野党に入れやすいんじゃないかという声もある。
小沢 そんなことないです。それは一部の人です。国民が、いまの自民党政権下で、安倍政権、菅政権を本当に心からいいと思っている人はほとんどいないですよ。もちろん民主党政権が失敗したという人もいるし、事実そうかもしれない。だけれど、1回失敗したからって、いまのままの政権でいいと思っている人が多いとは思わない。やっぱり、変えなくちゃいけない。「野党しっかりしてくれよ」という声はありますよ。それを真摯(しんし)に受け止める。それはいいけれども、「次の1年以内(に必ず政権を取る)」といった(20日の自身の政治塾での講演)のは、1年以内が任期だから。総選挙は必ずあるんだから。
松原 次の選挙という意味ですね。
小沢 「次の選挙で」という意味です。そこで、そのくらいの気持ちでやらなきゃ、国民に訴えられないでしょ。響かない、国民の気持ちに。「今回はいいんだ」「次なんだ」といったんじゃ、国民は支持しない。議会政治の本質からいっても、国民の期待感や気持ちからいっても、「絶対次の選挙で政権をとるんだ」と、強く主張しなきゃいけないと思います。
小沢氏の発言を受けて、志位氏は次のように語りました。
志位 私は、小沢さんの発言は当然だと思っています。やはり野党として、「次の総選挙で政権交代を実現する、政権をとる」。この本気度をバチッと示してこそ国民は真剣に耳を傾けてくれると思います。
先ほどもっと魅力ある政策を出せという話もされました。私たちは、新自由主義を転換して、暮らしをよくする、そこに責任を負う政治ということを、いま出そうということで話し合っていますが、それを出すことはできると思います。
しかし、政策を出したとしても、それを実行する政権をわれわれがとるんだというものがなかったら本気度は伝わりません。選挙のときに政策を訴えるというだけでは伝わらない。「政策を実行する政権を今度の総選挙のときにつくるんだ」と、この本気度をまず示さなかったら、野党は何のための野党かということを私はいいたい。
もう一つの本気度のポイントがあります。それは、政権交代をやった後の政権をどうするのかということです。
共産党も含めて野党は力を合わせて連合政権をつくるということです。私たちが閣内に入るか閣外かはどちらでもいいです。しかし連合政権をつくり、この国をよくするというところまで踏み切ってほしい。その政治決断をやってほしい。
枝野さんとは、政権交代で協力するという話までいったけど、やはりそこまで踏み切って、共産党も含めて連合政権をつくっていくと。
だから、本気度が伝わるという点では二つです。一つは、小沢さんがいった今度の選挙で政権をとるということを宣言すること。もう一つは、共産党も含めて新しい政権をつくると宣言すること。これを宣言して、「政権が実行する公約はこうですよ」と打ち出したら、これは響きます。
「政権をとって何をしたいのか」との質問に答えて
松原氏は、「2人に対する激励のメールがたくさん来ている」と紹介したうえで、視聴者から「実際に政権をとって何をしたいのか」という寄せられた質問を聞きました。
小沢氏は、雇用、年金、医療、中小・零細企業、農業など、国民の暮らしに密接に関わる部分で、制度を立て直したいと語りました。これを受け、志位氏は「小沢さん言われた論点、みんな賛成です」と答えたうえで次のように語りました。
志位 もう一つ言いたいのは、教育です。少人数学級が大事だということが、コロナのもとで非常にはっきりしてきました。これをぜひ実現したい。
最後に言いたいのは消費税です。消費税率を下げることが必要です。安倍政権が消費税率を8%にして、さらに10%に2度も増税しました。これで経済の土台を壊したわけです。そこにコロナがきて、いま、(経済は)ぺしゃんこになっています。
松原 消費税率を具体的にどうするのでしょうか。
志位 私たちは恒久減税として、5%にすべきだと訴えています。富裕層や大企業に対する優遇税制を見直して、財源をもってくるべきだと主張しています。
松原 そこは賛同されますか。
小沢 私は、恒久的に5%にするかというところには、まだ結論が出ていません。ただ、景気の悪いときに消費税を上げていると、ますます国民生活は圧迫するわけですよ。当面、5%にすることは賛成です。