2020年9月26日(土)
主張
始動した菅内閣
「不都合な遺産」に口閉ざすな
菅義偉内閣が発足して10日―。菅首相は、「デジタル庁」設置や携帯電話料金の引き下げなどを看板政策に掲げ、「成果」や「スピード」を強調します。それに対して、全く動こうとしないのが、安倍晋三前政権で大問題になった「森友」「加計」「桜を見る会」などの疑惑の解明や再調査です。「国民から信頼される政府」を目指すというなら、一連の疑惑解明に真剣に取り組むことが大前提です。
「森友・加計・桜」解明を
菅首相は、行政の縦割りや既得権益を打破するとか、「規制改革」を行うなどと繰り返します。
行政機構の改革を語るのであれば、官僚らに忖度(そんたく)、公文書の改ざん、隠ぺい、国会での虚偽答弁などをさせてきた安倍政権下の数々の疑惑について徹底的にうみを出し、政治姿勢を改めることが最優先の課題のはずです。
菅政権発足後の世論調査でも、「森友」「加計」「桜」などの疑惑について「解明を進めるべきだ」が54%(「朝日」18日付)と多数を占め、共同通信(同日付「東京」など)では、一連の問題を「再調査するべきだ」が62・2%に上っています。
ところが菅首相は、こうした国民の声にこたえようとはしません。就任後の記者会見では、「森友」疑惑について、財務省の調査や検察の捜査が行われ関係者は処分され、結論は出ているという姿勢を崩しません。国有地が不当な安値で売却され、公文書の廃棄や改ざんまで行われ、近畿財務局の職員、赤木俊夫さんが自殺に追い込まれたという「国政私物化」の重大疑惑は、解明が尽くされていません。真相解明を求めて赤木さんの妻・雅子さんが提訴した裁判も継続中です。雅子さんは菅政権に対して、第三者委員会を設置し再調査するよう求めています。切実な声に背を向けることは、政治家としての姿勢が問われます。
「桜を見る会」疑惑も、詐欺事件で逮捕されたジャパンライフ創業者にまで招待状が送られた問題が再び焦点になり、徹底究明が急務なのに、菅政権は調査を拒んでいます。「桜」疑惑は、首相主催の公的行事に後援会員などを大量に招待し、税金を使って飲ませ食わせしたという問題であり、絶対にあいまいにしてはなりません。今後は中止するという表明で、疑惑をなかったことにはできません。
菅首相は官房長官時代、「加計」疑惑に関連した文書を「怪文書」呼ばわりして隠ぺいを図った経歴があります。「桜を見る会」疑惑でも参加したマルチ企業幹部との関係が取りざたされている当事者です。河井克行元法相と妻・案里参院議員の選挙買収事件でも、案里氏を熱心に支援した菅首相の責任は免れません。安倍政権時代の「不都合な遺産」である疑惑にフタをすることは許されません。
「国民の感覚」いうなら
菅首相は首相就任時、「世の中には国民の感覚から大きくかけ離れた数多くの当たり前でないことが残っている」と述べました。その最たるものが、一連の疑惑ではないのか。「信なくば立たず」は、政治の大原則です。いくら「国民の感覚」とうたっても、疑惑に口をつぐみ、やり過ごそうというのでは説得力がありません。菅首相は説明すべきです。
菅政権の政治姿勢をただす国会での徹底論戦が急がれます。