2020年9月15日(火)
大坂、2年ぶり全米V
女子テニス マスクで人種差別に抗議
【ワシントン=池田晋】ニューヨークで12日に行われたテニスの全米オープン女子シングルス決勝で、世界ランキング9位の大坂なおみ選手(日本)が元世界1位のビクトリア・アザレンカ選手(ベラルーシ)を1―6、6―3、6―3で制し、2年ぶりの頂点に立ちました。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大後初めての四大大会で、無観客での開催。大坂選手は今大会、米国内で相次ぐ警察の暴力によって命を奪われた黒人犠牲者の名前が書かれたマスクを毎回着用しました。
大坂選手は記者会見で、新型コロナの自粛期間が「自分が何を成し遂げ、人々にどう記憶される存在でありたいか、多くの事を考え直す機会になった」と語りました。
鼓動
世界を変える“触媒”に
優勝を決め一人コートの真ん中にあおむけになる―。その胸にどんな思いがあったのか。
大坂選手は二つのたたかいに挑んでいました。一つはテニスでの勝負。そしてもう一つは人種差別とのたたかいでした。
決勝までの7戦。命を落とした黒人被害者の名入りマスクにその思いを込めました。
「いろんな人がこの問題を考えてくれるきっかけになれば」。決勝後に柔らかな笑みをたたえ話しました。
反差別を公言すること自体、大きな勇気がいったはず。一部に「スポーツに政治を持ち込むな」など心無い批判もあるからです。
しかし、大坂選手の行動にスポーツの大道があると言いたい。
人種差別は人権や平等な社会のあり方をゆがめます。これはスポーツの中心理念の破壊でもあります。反差別はスポーツを守るため。そしてスポーツの社会貢献でもあります。
国際テニス連盟が大会で選手の反差別行為を認め、多くの競技団体も推進しているのはそのためです。
大坂選手を支えるウィム・フィセッテコーチは「いつの日か社会を変えるためには、なおみのような大きな存在が必要なんだ」と話します。
往年の名選手、ビリー・ジーン・キングさんは「(大坂を)誇りに思う。なおみは変化を促す触媒として自分の立場を生かす道を選んだ。男女を含めたアスリートのリーダーで、愛情と心で語りかけている」と。
大坂選手の勇気あふれるスマッシュ。世界を変える“触媒”となることを深く願います。
(和泉民郎)