2020年9月10日(木)
ASEAN 「力の政治」警戒
対抗ではなく協力の前進を
外相会議オンラインで始まる
【ハノイ=井上歩】東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議が9日、オンライン形式で開かれ、日米中などアジア太平洋諸国が加わり安全保障問題や地域協力を議論する一連の関連会合が始まりました。
議長国ベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相はハノイで開かれた開会式で演説し、国際関係の力学が激しく変化していると指摘。「力の政治(パワー・ポリティクス)や利己的な計算が高まる傾向にある」「国際法と多国間機構は大きな挑戦を受けている」と厳しい見方を示しました。
ミン副首相は、国際法と平等、相互尊重などの原則擁護とともに、対立ではなく協力に利益を見いだす「戦略的信用」が「疑心を解消し、互恵協力を進めて武力紛争の危険を防止する重要な要素だ」と強調しました。
ミン副首相は「外部の影響から地域の平和と安定を守るため、ASEAN流を維持」することを強調。東南アジア友好協力条約(TAC)が定める武力の不行使・紛争の平和的解決などの原則と価値を推進していく考えを示し、TAC加入やASEANとの協力拡大を要望する国が世界で増加していると報告しました。
南シナ海情勢については「平和と安定、航行・飛行の自由を脅かす要素が存在している」と指摘。国連海洋法条約と国際法の尊重、紛争の平和的解決、信頼醸成、非軍事化と自制要求などの原則的立場を強調しました。
一連の閣僚級会合では、9日夜頃に東アジアサミット(EAS)外相会議、12日には安全保障問題を議論するASEAN地域フォーラム(ARF)がオンライン方式で開かれ、米中外相が今年初めてASEAN主導の地域会合にそろって参加する予定です。南シナ海問題などで両国はますます対立を深めており、激しい応酬も予想されます。
ASEAN側には、「米中対立のなかに閉じ込められたくない」(8日、ロイター通信のインタビューでインドネシアのルトノ外相)との考えが存在。「対抗ではなく対話と協力」を趣旨とする「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)に基づく諸国との協力拡大を重視しています。