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2020年8月27日(木)

香港国安法 教育に圧力

教科書“親中”に改訂

「従順な世代つくり出す」批判も

 香港の高校の教科書改訂版から「三権分立」や「民主派」などの言葉が削除されたのに続き、中学校の教科書改訂版からも「民主化デモ」や「天安門事件」の写真などが削除されました。25日付の香港紙・明報が伝えました。


 問題となっているのは、さまざまなテーマを通して批判的精神を教え、学生の自ら考える力を養う目的で導入されている「通識教育科(リベラル・スタディーズ)」の教科書。2009年から高校の必修科目で、12年からは大学の入試科目にもなっています。中学では約3割の学校が導入しています。

 香港メディアによると、教科書を作成する出版社6社が17日に高校の通識教科書の改訂内容を公表。「三権分立」が削除されたのに加え、市民の抗議行動に関わる資料や写真なども削除されました。また、ある教科書は「近年、香港のデモが激しくなり、市民と警察が衝突している。原因の一つは政府が市民の経済や政治、生活面での要求に応えていないからだ」との文章を削除。代わりに、市民は法を守る義務があるとする内容が盛り込まれました。

 香港教育局は、改訂は出版社が独自に行っていると主張しています。一方、民主派寄りの教育団体「香港教育専業人員協会」は19日に声明を発表し、「政治審査」があったと指摘。「通識教育科の実践を著しく損害し、学生が社会問題を多角的に理解し考える機会を狭める」と批判しました。同協会の田方沢副会長は香港メディアに「改訂内容は親中派の観点が色濃く、政治的要因が考えられる」と述べました。

 香港の親中派や中国政府は、香港の「自由すぎる教育」が、デモで若者が過激化した原因だと攻撃してきました。中国国営新華社通信は21日、「通識科の『消毒』は、香港の教育が正しい道に進む第一歩だ」と題する論評を配信し、教科書改訂を歓迎しました。

 6月末に施行された香港国家安全維持法の第10条では、香港政府が学校などで国家安全教育を実施するよう定めており、同法施行で教育への圧力も強まっています。

 ある在日香港人は本紙に「デモに参加していた香港の若者は、自分で情報を収集し、自分で考え、自分が正しいと思った行動をしている。その背景には、香港の通識科があるのは間違いない」と指摘。その上で、「今回の改訂は、政権に従順な新しい世代をつくり出すための第一歩だ」と警戒感を示しました。


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