2020年8月24日(月)
ヘイト投稿放置 批判高まる
印議会、フェイスブック代表召喚へ
幹部の“与党優遇” 米紙告発
インドの野党は、世界的なSNS企業の米フェイスブック(FB)に対し、右派与党の政治家によるヘイトスピーチを放置してきたとして批判を強めています。インド下院の情報技術委員会は20日、この問題で9月2日に同社の代表を召喚することを決めました。
インドでは、ヒンズー至上主義の与党インド人民党(BJP)の政治家が、「イスラム教徒は裏切り者」「モスクを破壊せよ」「(イスラム教徒の)ロヒンギャ難民は射殺」などのヘイトスピーチを投稿してきましたが、FB側は削除やアカウント停止をしていません。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル14日付はFBの従業員らの話として、一部のBJP政治家の投稿が、3月までに社内のヘイトスピーチ規定に違反し、現実の暴力を招く恐れがある「危険」なサイトと認定されていたが、与党との関係を重視する会社幹部の判断で放置されたとの記事を掲載。インドのFB利用者は3億人以上で世界最大の市場であることから、事業にマイナスになるという判断が働いたと批判しました。
インドでは、2014年にBJPのモディ首相が就任して以来、強硬なヒンズー至上主義団体による草の根の少数派迫害が強まりました。イスラム教徒とヒンズー教徒の恋愛や結婚を「愛のジハード(聖戦)」と攻撃したり、ヒンズー教が神聖視する牛を食べるイスラム教徒やキリスト教徒をリンチする事件が横行。このキャンペーンにFBなどのSNSが利用されました。最近はイスラム教徒が新型コロナウイルスをばらまいているといったヘイトスピーチも広がっています。
FBインドの幹部アジット・モハン氏は21日、声明を発表し、FBは「いかなるヘイトや妄言も非難」するとしながらも、「もっとやるべきことがある」と述べました。
しかしウォール・ストリート・ジャーナル21日付は、FB社内のイスラム教徒従業員グループ(インド、中東、米国出身)が、同社指導部への書簡で、インドでのヘイトスピーチ対応を見直すよう求めたと報道。問題は世界的広がりを見せています。(伊藤寿庸)