2020年8月24日(月)
主張
バッタ大群の被害
食料危機を防ぐ国際的支援を
新型コロナウイルスの感染まん延と同時にアフリカやアジアで「サバクトビバッタ」の大量発生による農業被害が大問題になっています。国連食糧農業機関(FAO)は、4200万人が食料危機にひんしていると警告を発しています。国際的な連携を強め、対策を強化することが急務です。
アフリカから西アジアへ
アフリカ北部から中東、南西アジアにかけての広大な地域でサバクトビバッタの大群が襲来し、トウモロコシなどの農作物を食べ尽くす被害が発生しています。大群で長距離を動き回り、1日で自分の体重と同じ量の植物を食べます。成虫の群れは1平方キロ当たり8000万匹にもなり、1日当たりの被害は3万5000人分の食料に匹敵するとみられます。
繁殖力が強く、6カ月で400倍、9カ月で8000倍に増殖し、襲われた地域では農業が壊滅的な状態に陥ります。2018年、乾燥地帯のアラビア半島に大雨が降り、餌となる草が増えたため大量に繁殖したといわれます。
FAOによると、55カ国・地域、1億3500万人が影響を受ける恐れがあります。被害はアフリカ北西部からケニア、エチオピアへと東に移り、パキスタン、インドに及んでいます。イラン南西部では過去50年現われたことのなかったバッタの群れが出現したと報告されています。イエメンなど武力紛争で人道危機が起きている国では二重三重の苦難です。南米や中国でもバッタの大量発生が報告されています。
FAOが支援する防除活動は、航空機でバッタの群れを追い、移動先や産卵場所に化学農薬や生物農薬を散布して駆除します。被害地域への食料支援を含め、3億1200万ドル(約333億円)の緊急資金が必要とされます。コロナ危機のなか、5月までに集まったのは半分に満たない1億3100万ドルです。コロナ危機で人の移動が制限されていることも防除活動の妨げとなっています。
短期間に国境を越えて拡大するバッタ被害に対処するためには国際協力が不可欠です。特に主要国の役割が重要です。日本政府は今年、アフリカや中央アジア諸国に20億円を超すバッタ対策の緊急援助を決定しました。
途上国に対する日本の政府開発援助(ODA)は、国際的な指標となっている国民総所得比で0・28%(18年)にすぎません。国際社会で合意された先進国の目標は0・7%です。日本は、現地の人々が望まない大規模開発や自国の外交戦略の手段としての援助でなく、バッタ対策のように途上国国民の生活を直接支援する援助を増額すべきです。
貧困、飢餓をなくすため
バッタの大量繁殖には大雨や巨大サイクロンの発生など異常気象が関係しています。地球規模の気候変動が影響していることが考えられます。産業革命前に比べて世界の平均気温上昇を1・5度以内に抑えることは死活的課題です。
国連は「持続可能な開発目標」(SDGs)で30年までに極端な貧困や飢餓を根絶することをめざしています。バッタによる甚大な農業被害への対策は欠かせません。世界が科学的英知を結集するとともに、主要国が積極的に資金を拠出して支援を強めることが求められます。