2020年8月4日(火)
対コロナに戦闘機!?
失業給付特例削る一方 F35予算計上
米共和党の支援案
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない米国で、連邦議会とホワイトハウスが新たな国民支援策について協議を進めています。共和党が多数を占める上院では、同党が7月27日、総額1兆ドル(約105兆円)に上る支援策を発表。失業給付の特別措置を延長しない一方、F35ステルス戦闘機の購入費用を盛り込むなど、コロナ禍で苦しむ国民を支援するものとなっていません。(山崎伸治)
身内からも批判
共和党案は「保健、経済支援、免責、学校」の英語の頭文字をとってHEALS(治癒、回復)法案と命名。発表に際し、同党のマコネル上院院内総務は「米国の労働者と家族に再度、歴史的な支援を施すための枠組み」と胸を張りました。
国民1人当たり1200ドルを直接支給するための予算のほか、中小企業向けの融資に1900億ドル、教育支援に1050億ドルなどをあてています。
ところが、7月末で期限切れとなる失業給付の特別措置の延長は盛り込みませんでした。同措置では通常の失業給付に週600ドルが上乗せされ、およそ2500万人が受給しているとされます。
さらに、総額294億ドルが国防総省向けの予算にあてられ、そのうち80億ドルはF35ステルス戦闘機やC130輸送機、AH64攻撃ヘリコプター、ミサイル防衛システムの購入費用とされています。
HEALS法案をまとめた上院歳出委員会のシェルビー委員長(共和)は米メディアに対し、「国防産業の基盤の多くが現在、損なわれようとしている。多くの人が失業している」と指摘。同氏の広報担当者はさらに「米国経済と国の防衛にとって不可欠だ」と述べ、軍需産業の雇用を確保することが、コロナ対策だと強調しました。
同法案に対して、民主党のシューマー上院院内総務は「今、米国はこの数十年で最大の危機に直面しているが、共和党のみなさんが気にしているのは企業の友人だ」と皮肉を込めてツイッターに投稿。共和党内にも反対の声があるといいます。
民主党は多数を占める下院で、5月に総額3兆ドルに上るコロナ対策法案を発表しています。マコネル氏は同案を「社会主義者のマニフェスト」などと批判していました。
ホワイトハウスのメドウズ首席補佐官は8月2日放映の米テレビのインタビュー番組で、議会とホワイトハウスとの国民支援策の協議について、「近いうちに解決策が得られると楽観視はしていない」と表明。11月の大統領選・連邦議会選もにらみながら、すり合わせが続きます。