2020年7月30日(木)
国家安全法1カ月 脅かされる自由
「雨傘」発起人 解雇
香港大准教授「たたかい続ける」
香港大学は28日夜、民主化をめざした2014年の「雨傘運動」の発起人、戴耀廷(たい・ようてい)准教授の解雇を決めました。香港メディアが報じました。教職員や学生らは大学の決定を強く批判。戴氏はフェイスブックで「香港の学問の自由の終わりだ」と断じました。香港で人権抑圧を強める「国家安全維持法」施行から30日で1カ月になり、あらゆる分野で自由が脅かされています。
戴氏は昨年、雨傘運動当時の活動に関連して禁錮16カ月の有罪判決を受けています。現在は保釈中で、上訴審を控えていました。大学側はこれを解雇の理由に挙げています。香港メディアによると、解雇を決めた香港大校務委員会は林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が任命した委員長を筆頭に、親政府派の委員が多数を占めています。
戴氏はフェイスブックで、この決定は「大学以外の勢力によるものだ」と指摘。「香港の研究者は今後、政治や社会問題について意見の発表が難しくなった」とし、「香港はすでに『一国一制度』ではないかとの疑問に対し、十分な答えを示した」と述べました。その上で「私は別の身分で法治の研究や教育を続ける。香港の法治のためのたたかいをやめることはない」と強調しました。
中国政府の香港出先機関「中央駐香港連絡弁公室」は同日、「悪を懲らしめた」と歓迎する談話を発表。談話は、戴氏が「香港独立」の言論を公然と発表し、雨傘運動や逃亡犯条例改定案反対、9月の立法会(議会)選での民主派の過半数獲得などを呼びかけ、「香港の社会矛盾を激化させた」と批判。戴氏の解雇は「完全に自業自得だ」と述べました。
香港大学の教職員でつくる教務委員会は「解雇の理由は不十分だ」と反対を表明。同大学生会の葉芷琳(よう・しりん)会長は「強烈な非難」を示して抗議しました。同大の陳祖為教授はフェイスブックで「香港大学の歴史でぬぐい去ることのできない重大な汚点となるだろう」と批判しました。