2020年7月24日(金)
災害ごみ 収集進まず
熊本・人吉 豪雨被害の復旧阻む
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記録的豪雨に襲われた熊本県内の被災地では、住民とボランティアによる浸水した家屋の片付けが本格化しています。一方、水につかって使えなくなった家具や電化製品、畳など「災害ごみ」の収集が進まず、復旧の障害になっています。(丹田智之)
球磨川の氾濫で市街地の広い範囲が浸水した人吉市では、道端に災害ごみがあふれる光景が目につきます。多くの市民は大型ごみを運搬するトラックを所有していないため、近所の空き地などに持ち込んでいます。
4日朝に球磨川の堤防が決壊し、腰の上まで水につかりながら避難したという男性(76)は、自宅の駐車場に山積みになった災害ごみの前で困り果てた様子でした。鉄くずやガラスも入り混じり、道路側に崩れると危険な状態です。このうち3分の1は誰が持ってきたか分からない、と嘆きます。
「生ごみも捨てられたのか、とにかく腐敗臭がきつい。(被災者として)お互いさまなので、注意せずに我慢してきました。一部は軽トラックで災害ごみ集積所へ持って行きましたが、入り口に車列ができて5時間ほど待つ日もあります。疲労の限界です」
駐車場の災害ごみは、被災後4日目から集まりはじめたといいます。まだ収集車は来ていません。中澤さんは「これ以上、ごみが増えたら本当に困ります。なんとかしてほしい」と訴えます。
道沿い50メートル“ごみの壁”
市民困惑 支援は急務
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人吉市下薩摩瀬町の住宅街では、道路沿いに50メートルほどの“ごみの壁”ができていました。
収集車から降りてきた職員の男性は「満杯になったら、市内の集積所に行きます。同じ場所を1日に2~3往復していますが、収集が追いつかない」と額の汗をぬぐいました。
被災地で活動中の自衛隊は、15日までに2日間かけて市内の災害ごみを収集しましたが、継続した活動にはなっていません。
床上まで浸水した家の片付けをしていた男性(67)は、要望しても収集車が回ってこない現状にストレスを感じているといいます。
「市役所に電話で相談しても『集積所に持って行ってください』と言われるだけでした。協力してもらえそうな友人や知人もいないので、本当に困っています。せめて収集のめどを示してほしい」
人吉市では、災害ごみ集積所とは別に土砂の受け入れ場所を設置しています。ただ搬入の際に、「土のう袋に入れた土砂は持ち込まないように」「2トン以上のダンプトラック(荷台が傾く車両)で持ち込むように」と呼びかけています。
友人から重機を借りて自宅の土砂を除去したという男性(47)は「軽トラックでは持ち込めないというので作業を進められない」と困惑しています。
人吉市環境課の担当者は「熊本市の緊急支援で16日から約10台の収集車が入っています。人吉市の収集車は家庭ごみの通常収集のみ。災害ごみが多い地域を重点的に回っている状況で、県にも対応を要請している」と説明します。
日本共産党の本村令斗市議は「収集車の台数を増やすことが最優先で、土砂の回収を含めて県内外の自治体の支援が必要です。一日も早く市民の不安を解消できるようにしたい」と述べています。