2020年7月19日(日)
奴隷制謝罪、補償へ
米南部州の市議会が決議
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米南部ノースカロライナ州アシュビル(人口約9万2500人、2018年)の市議会はこのほど、市がかつて奴隷制度に関与し制度を是認したことについて謝罪し、奴隷の子孫である黒人住民に補償を行うとする決議を全会一致で可決しました。
ノースカロライナ州は英国から独立した最初の13州の一つです。早い時期から黒人奴隷を使った大規模農業を始め、南北戦争では奴隷制の存続を主張した南部連合に所属しました。
14日に可決した決議は、黒人が「不当に奴隷にされ、隔離され、投獄されてきた」と強調。人種差別政策によって家屋所有の否定、差別的な低賃金による貧困化、教育や医療の制度からの排除、警察や司法制度による不当な扱いが行われ、「数世紀にわたり構造的な人種差別が形作られてきた」としました。
決議は「市議会は黒人の奴隷化に参加し、制度を是認したことを謝罪し、その償いをする」と表明。人種隔離政策や都市計画に基づく黒人コミュニティーの破壊などについても「謝罪と償い」を約束しました。「公私にわたる構造的な人種差別がもたらした損害を修復」し、黒人住民が今後「世代を超えて富を形成する」ことができるよう新たな委員会を設置するとしました。
補償の方法としては、黒人住民を対象に家屋の所有率を引き上げたり起業やキャリアアップの機会を増やしたりする計画に資金拠出することなどが議論されています。
決議を主導したキース・ヤング議員は、市が現在の形になるまでには「何百年にもわたって黒人の血が流されてきた」と指摘。「構造的な抑圧による被害だ。1回きりの補償金では済まない。いま米国はやっと過去の罪を認識し始めたところであり、われわれはその罪の償いを行う」と米メディアに述べました。(島田峰隆)