2020年6月26日(金)
国家安全法案 香港法曹界が懸念
「司法の独立」を害する
中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で審議中の「香港国家安全維持法案」に対し、香港律師会(弁護士会)が24日、法案の内容や審議の不透明さを懸念する声明を発表するなど、法曹界から懸念の声が噴出しています。
20日に発表された法案の概要では、国家機関が「特定の状況下」で国家安全にかかわる案件に「管轄権」を行使するとしています。弁護士会の声明は「香港住民が香港以外の裁判所で裁判を受ける」可能性があると指摘。「公平な裁判を受ける権利を含む基本的人権が保障されるのか疑問だ」と懸念を示しました。
また、国家安全にかかわる案件を審理する裁判官を香港行政長官が指名することについて「行政長官に司法を監督する権限を与えるものだ。『司法の独立』を害する」と主張。法案の全文がいまだに示されていないことに不満を表明し、立法プロセスの透明化を求めました。
香港終審法院(最高裁)の首席裁判官を務めた李国能氏は23日の声明で、国家機構による管轄権の行使について「極めて例外的状況だとしても、香港基本法(憲法に相当)が定めている司法の独立を破壊する」と指摘しました。
香港大律師公会(法廷弁護士会)も23日の声明で、行政長官による裁判官の指名に対し「司法プロセスの公平・公正を害する」と懸念しました。同会の葉巧琦(よう・こうき)副主席は香港メディアに、国家機関が「特定の状況下」で「管轄権」を行使するというが、「どのような状況で何を行使するのかあいまいだ。法曹界と市民は疑問を抱いており、明確に定義すべきだ」と強調しました。(小林拓也)