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2020年6月21日(日)

主張

コロナと途上国

医療・人道・経済へ支援強めよ

 新型コロナウイルスの感染者が発展途上国で急増しています。武力紛争地域では感染の実態すらつかめていません。難民の間でのまん延も懸念されます。感染症は世界全体で対策をとらないと収束させられません。各国政府と国際機関が協力して途上国支援を強める必要があります。

実態すらつかめぬ紛争国

 コロナ感染者数はブラジルで5月中旬以降、連日万単位で増え、100万人を超えたほか、ペルー、チリ、メキシコなど中南米で急激に増加しつつあります。インドは38万人を超え、世界第4の感染国になっています。5月に開かれた世界保健機関(WHO)総会の決議は、コロナ危機が特に途上国に深刻な被害をもたらしているとして援助を呼びかけました。

 WHOによると、武力紛争が起きている国ではイエメンの感染者が約900人、リビアが約500人、シリアが約180人となっています。感染が少ないのではなく、実態を把握できていないためとみられます。リビアでは病院がたびたび砲撃され、水道施設も無差別に攻撃されています。人道支援にあたる要員の活動が戦闘によって妨げられ、医薬品や食料の配布も困難です。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、世界に2000万人以上いる難民の84%が保健・衛生システムが脆弱(ぜいじゃく)な中低所得国で受け入れられているとして、緊急支援を訴えています。

 対応は遅れています。グテレス国連事務総長は3月にコロナ危機に対処するための停戦を世界の紛争当事者に要請しましたが、国連安全保障理事会は法的に拘束力を持つ停戦決議をいまだに採択していません。米国と中国の対立によって議論が進まないためです。米中は安保理常任理事国として責務を果たすべきです。コロナ危機のさなかにトランプ政権がWHO脱退を宣言したことは感染収束に新たな困難を持ち込む暴挙です。

 医療・人道援助とともに新興国・途上国の経済を破綻させない政策も不可欠です。世界銀行は、新興国と途上国の国内総生産(GDP)が5年間で最大11%押し下げられる恐れがあると試算しています。原油をはじめ輸出向け1次産品の値下がり、資本の流出による通貨下落、出稼ぎ労働者からの送金の減少など新興国・途上国の経済情勢はコロナ危機によって急速に悪化しています。世界市場にも悪影響を及ぼしかねません。国連貿易開発会議(UNCTAD)は2・5兆ドル(約270兆円)の支援策を提言しています。

 新興国・途上国支援には対外債務の帳消しが不可欠です。すでにレバノン、エクアドル、アルゼンチンが債務不履行に陥りました。

広がる債務免除をの声

 UNCTADは1兆ドルの途上国債務の放棄を提起しています。20カ国・地域(G20)は4月に最貧国の債務返済の一時猶予に合意しましたが、さらに踏み込む必要があります。国連事務総長は債務救済をすべての途上国と中所得国に広げるよう求めています。欧米、中南米の国会議員ら300人以上が債務免除を求める共同書簡を国際通貨基金(IMF)・世銀に送り、G20に提言を行う市民運動「C20」も債務免除を呼びかけています。IMF・世銀や主要国は国際世論に応えるべきです。


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