2020年6月2日(火)
米コロナ禍 人種格差・貧困浮き彫り
アフリカ系住民の感染・死亡率高く
【ワシントン=遠藤誠二】新型コロナウイルスの感染拡大が続き、死者が10万人を超えた米国では、アフリカ系をはじめとした有色人種の感染・死亡率が白人などに比べ高く、人種格差と貧困の問題がクローズアップされています。
民間の調査機関、APMリサーチ・ラボは、国内40州とワシントン特別区を対象に5月20日、19日までの感染者・死者のデータを分析し、結果を発表しました。
白人の2.5倍
それによると、アフリカ系住民は、10万人に50人の割合で新型コロナ感染により亡くなっており、白人(10万人に20人が死亡)に比べ2・5倍の高さです。APMは、「アフリカ系が白人と同じ割合なら、1万2000人の命が助かっている」と指摘します。
また、アフリカ系住民は人口に占める比率に比べ死亡率が高く、ワシントン特別区では人口比率が44%であるのに対し死亡率は80%、サウスカロライナ州では人口比率27%で死亡率は56%とそれぞれ2倍です。
同調査ではまた、先住民(ネイティブ・アメリカン)の感染状況がひどく、ニューメキシコ州では先住民の人口比率は8・8%ですが死亡率は53・3%と6倍。同州の半数以上の死者が先住民となっています。アリゾナ州でも人口比率3・9%で死亡率が21・1%と約5倍です。
国内最大規模の感染者・死者を出したニューヨーク市では、市内郵便番号地域別の感染者・死者のデータを公表しました(5月20日)。
声の反映を
富裕層が住むマンハッタン区の感染率・死亡率は低い一方で、貧困層が住むクイーンズ区西部、ブロンクス区北東部、ブルックリン(カナーシー・フラットランズ地区)などは10万人に4000人の規模で感染者が出ており、死者は同400人から600人と高くなっています。
ニューヨーク・タイムズ紙は、市人口の5%にあたる最富裕層42万人が市外に避難(3月1日~5月1日)し、アッパーイーストサイド、ウエストビレッジ、ソーホー、ブルックリンハイツなど富裕層が居住する地域では人口が減少したと報じました。
アフリカ系人口比率が多い、北東部メリーランド州でも、アフリカ系住民の人口比率が30%であるのに対し、感染率は49・4%、死亡率は53%、白人は人口比率60%で感染率は36・9%、死亡率は38%です。
同州のホーガン知事は、「取り組む必要のある公衆衛生上の格差問題だ」と話します。
全米有色人種地位向上協会(NAACP)は、「有色人種のコミュニティーは偏って新型コロナウイルスの影響を受けている。彼らの声がより反映されなければならない」と指摘します。