しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年6月1日(月)

主張

米WHO脱退表明

感染収束に困難もたらす誤り

 新型コロナウイルスの感染対策に世界が取り組んでいるさなかにトランプ米大統領が世界保健機関(WHO)からの脱退を表明しました。感染収束に向けた国際協調に新たな困難をもたらす重大な誤りです。直ちに撤回すべきです。

自ら賛成した決議も放棄

 脱退表明は、知的財産権や香港問題で中国を非難する記者会見の中で行われました。「中国がWHOを全面的に操っている」とし、コロナ危機への対応に関連して米国の要求を実行しなかったということを理由に挙げました。まったく道理のない主張です。

 5月に開かれたWHO年次総会は、コロナ対応に関してWHOの「指導的役割」や多国間協力の重要性を全会一致の決議で確認しました。WHOが1月に国際的な緊急事態宣言をいったん見送ったり、初動が遅れた中国をテドロス事務局長が称賛したりしたことなどWHOの対応の問題点については、同事務局長に「公平かつ独立した包括的」な検証を求めました。いずれも米国が賛成した決議に明記されていることです。WHOの活動を批判するのであれば、米国は加盟国として行うべきです。WHOに最大の資金を拠出する大国としてそれが当然の姿勢です。

 公衆衛生を担う国連専門機関であるWHOはまずコロナ収束に全力をあげなければなりません。対応の検証に一定の時間がかかったとしても、やむをえません。WHOが米国の言う通り行動しないからといって脱退を宣言するなど、自ら賛成した決議すら踏みにじる無責任極まりない態度です。

 ビデオ会議形式で開かれたWHO総会には主要国からも首脳の参加がありました。しかし、トランプ大統領は参加を拒み、テドロス事務局長に宛てて30日以内に「改善」に取り組まなければ脱退も辞さないとした書簡を一方的に公表しました。今回、脱退を表明した記者会見でも質問をいっさい受け付けず退席する異常さです。コロナ収束に向けて国際協力を築こうとする真剣さはまったく見られません。

 トランプ大統領はコロナ感染拡大に関して中国とWHOを非難しますが、米国の感染者が世界最多となったのはトランプ政権が対応に失敗したからです。米国内では大統領のコロナ軽視が厳しく批判されています。トランプ氏は11月の大統領選挙を前に、中国とWHOを非難することによって自らの責任を逃れようとしています。

 WHOは、国際保健事業の調整、感染症をなくす事業の推進、ワクチン開発の促進と公平な分配など重要な任務を負っています。重大な感染症が発生した場合には国際的な緊急事態宣言を発します。こうした役割を持つWHOの活動が低下することは世界の誰も望みません。トランプ大統領はWHOへの拠出金を停止し、その分を有効に活用すると言いますが、国境を越えて世界中に広がるウイルスへの対策を米国だけで行うことは不可能です。米国民の命をも危うくする愚かな行為です。

日本は米の態度をただせ

 こうしたトランプ大統領の常軌を逸した振る舞いに対して安倍晋三首相は批判も、たしなめることもしてきませんでした。安倍首相はトランプ大統領にWHO脱退表明を撤回するよう働きかけるべきです。


pageup