2020年5月28日(木)
世界の医療関係団体のG20首脳への公開書簡
世界の医療関係団体が26日発表した、日米を含む20カ国(G20)の首脳宛ての公開書簡全文は次のとおりです。
医療従事者は結束して、COVID―19(新型コロナウイルス感染症)の世界的大流行に対処する、現実的で科学に基づいたアプローチを支持している。それと同じ思いで、われわれは、この危機からの「#健全な復興」についても結束して支持している。
われわれは、健康、食料安全保障、働く自由が共通の脅威によって中断されるとき、社会がいかにもろいものであるかを直接体験した。この現在進行中の悲劇は重層的であり、格差と公衆衛生システムの予算不足によって悪化している。われわれは、何十年もの間目にしなかったレベルで、死、病気、精神的苦痛を目にしている。
これらの影響は、世界的大流行への備え、公衆衛生や環境の管理に適切な投資がなされていれば、部分的には緩和されていたかもしれないし、あるいは防ぐことさえできたかもしれない。われわれは、こうした過ちから学び、より一層強く、健全で、回復力のある形で復興しなければならない。
COVID―19の前に、大気汚染―主に、交通、料理や暖房に使う効率の悪い住宅用エネルギー、石炭燃料の発電所、固形廃棄物の燃焼、農作業によるものである―がすでにわれわれの体を蝕(むしば)んでいた。それは、肺炎、慢性の閉塞性肺疾患、肺がん、心臓疾患や脳卒中の危険を増大させ、その重症化を深刻にし、毎年700万人の時期尚早の死につながっている。大気汚染はまた、低体重出生や喘息(ぜんそく)といった不利な妊娠結果を引き起こし、われわれの医療制度にいっそうの重圧をもたらす。
真に健全な復興は、われわれが呼吸する空気や飲み水を損ない続ける汚染を許さないだろう。それは、脆弱(ぜいじゃく)な人々に新たな健康上の脅威をもたらす可能性がある弱まることのない気候変動や森林破壊を許さないだろう。
健全な経済と市民社会においては、われわれのなかで最も脆弱な人々に気が配られる。労働者は、汚染や自然の劣化を進めない賃金の高い仕事に就ける。都市は、歩行者、自転車利用者、公共交通を優先し、河川や空は保護され、汚染されていない。自然が力強く育ち、われわれの体は感染症からの回復力を一層備えたものとなり、だれも医療費が原因で貧困に追いやられることがない。
そうした健全な経済を作り上げるために、われわれはより健全で、より回復力のある社会に奉仕する効果的なインセンティブやディスインセンティブ(意欲をくじくもの)を活用しなければならない。もし各国政府が現在の化石燃料への補助金に大幅な改革を行い、大部分をクリーンな再生可能エネルギーの生産へと移行させるならば、われわれの大気はもっときれいになり、気候変動を起こす排出は大きく削減され、今から2050年の間に世界の国内総生産(GDP)をほぼ100兆米ドル増やす経済回復をもたらすだろう。
あなたがたがポストCOVID―19の対応に目を向けるなか、われわれは、医療の責任者や科学アドバイザーの責任者があらゆる経済刺激策の作成に直接関与し、そうした政策が持ちうる公衆衛生上の短期的・長期的な影響について報告し、承認を与えることができるようになるよう求める。
あなたがたの政府が今後数カ月に医療、交通、エネルギー、農業といった主要分野で行う大規模な投資では、健康の保護と増進がその中核に据えられなければならない。
世界がいま必要としているのは「#健全な復興」だ。あなたがたの刺激策はまさにそのための処方箋にならなければならない。