2020年5月26日(火)
エジプト コロナ流行下 DV相談が激増
“女性守る法律必要”
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【カイロ=秋山豊】エジプトの女性団体は新型コロナウイルス流行のもとで、DV(家族やパートナーによる暴力)の相談が増えていると指摘します。
エジプトでも外出自粛が呼び掛けられ、夜間の外出は3月下旬から禁止されています。
女性の権利向上を求める「エジプト女性の権利センター」のニハド・アボルコムサン代表によると、3月15日から4月20日にかけてのDV相談件数は1146件でしたが、4月21日から5月20日にかけては倍加しました。裁判所の閉鎖で訴えることができないため、元夫が養育費を支払わなくなるなど経済的暴力も少なくありません。
エジプト女性法律支援センターのアザ・ソリマン代表は、被害を訴える女性121人を調査し、42%がウイルス流行後に初めて身体的暴力を受けたと指摘します。
性的いやがらせに反対する運動「私たちはハラスメントに沈黙しない」を呼び掛けるハディア・アブデルファタさんは要因の一つとして、夫の失職や収入減による家庭内のいさかいが暴力につながっていると考えています。
同国政府は被害者の保護施設を強化すると述べています。一方、DVに直接言及する法律はありません。ニハドさんは、DVは身体的暴力だけでなく経済的暴力、精神的暴力、性的暴力などさまざまな形があり、全ての暴力から女性を守る法律が必要と主張します。
カイロ近郊に暮らす女性(43)は、20代のころ父親に親戚の男性との結婚を強要されたと言います。その夫に殴られ続けてきました。「男性が支配者で、すべての決定権を持っていると言われて育った。おかしいとわかっていたが従うしかなかった」と語ります。
ハディアさんは「世界中の女性がDVに苦しんでいる。男性による女性への支配欲や差別、男性優位の社会そのものを変え、女性が暴力から解放され、権利が本当に尊重される世界にしたい」と訴えます。