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2020年5月26日(火)

「米国第一」国際協力の妨げ

トランプ氏“コロナより再選”

中国批判 WHOにも矛先

 【ワシントン=池田晋】新型コロナウイルス対応で国際社会の協力が求められる中、トランプ米政権は、感染が最初に始まった中国の初動を繰り返し非難、国連の専門機関である世界保健機関(WHO)にも矛先を向け、対立と混乱を世界に広げています。約5カ月後の11月に大統領選が迫るトランプ氏にとって、中国批判と自国の経済回復で再選することが最優先のためです。


 トランプ氏は18日、WHOのテドロス事務局長宛ての書簡を公表し、「中国寄り」の対応が30日以内に改められなければ拠出金の一時停止を恒久措置に切り替え、脱退も検討すると脅しをかけました。

失策の責任転嫁

 中国に対しても、関係の「全面断絶」を示唆するだけでなく、必需物資のサプライチェーン(供給網)から中国の切り離し策を検討。米中2大国の対立は、非難の応酬にとどまらない次元に発展する可能性が出てきています。

 コロナ以前、トランプ氏の再選戦略の要は、低失業率や高株価など数字上の好調さをみせる経済運営でした。ところがコロナ対応を誤り、失業率は1930年代の世界大恐慌以来、最悪となる14・7%(4月)へ急悪化。当初の戦略が吹き飛ぶ中、政権・共和党が持ち出してきたのが“中国たたき”による失策の責任転嫁と、経済の早期回復で支持者をつなぎとめる戦略です。

 米政治専門紙ポリティコが報じたメモによると、共和党は政権の失策を問われてもひたすら対中批判と民主党が中国に「甘い」点を押し出すよう、全国の候補者に指南。トランプ氏は最近、ミシガン州など選挙の重要州を公務で訪れては経済活動の再開をアピールしています。

国内不満を反映

 戦略は、米国内で高まる中国に対する不満を反映したものです。ピュー・リサーチ・センターが4月に発表した世論調査によると、中国を「好ましくない」とみる国民は2005年の質問開始以来、最高の66%にのぼりました。中国に厳しい見方は共和党支持層(72%)の方が強いものの、民主党支持層(62%)にも広がっています。

 大統領選前の国内情勢を背景にトランプ氏が対中姿勢を緩める気配はなく、米国の自国第一の姿勢は国連などあらゆる外交の場で国際協調を妨げています。

 国連安保理は3月下旬以来、グテレス事務総長の「世界即時停戦」の呼び掛けを実行すべく、安保理が議題として扱う全紛争の一時停戦を求める決議案を折衝中。ただ、米中がWHOに関する記述などで対立し、コロナ対応をめぐって何の決議もいまだ採択できていません。


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