2020年5月24日(日)
「一国二制度の死だ」
中国全人代提案 香港民主派が批判
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日、香港での国家安全法制定に関する決定を提案したことに対し、民主派らは、香港での「高度な自治」などを保障した「一国二制度」の「正式な死となる」と批判しています。(小林拓也)
決定案は、香港での国家分裂、国家政権転覆、国家安全に重大な危害を与える行動、外国勢力による香港への干渉―を防ぎ、処罰するための「国家安全法制」を、全人代常務委員会が制定すると規定。その上で、香港の憲法に当たる香港基本法の「付属文書3」に加えることで、香港立法会の審議を経ずに施行するとしています。制定時期は未定ですが、香港メディアは「早ければ8月にも施行される可能性がある」と報じています。
さらに決定案は、中央政府の国家安全機構が、香港で国家安全に関わる職責を履行するとしました。
香港の民間記者会は22日の記者会見で、国家安全法が施行されれば、「香港の『高度な自治』は破壊され、『一国二制度』は正式な死を迎える」と批判しました。
民主派の「香港市民愛国民主運動支援連合会」の李卓人主席は同日の会見で、国家安全法は中央政府の「万能のカギ」になるだろうと指摘。「われわれの活動の何が国家政権転覆の扇動として罪になるのかわからない」と述べました。
香港衆志の羅冠聡(ら・かんそう)氏は会見で、「国外での交流活動が多いため、真っ先に拘束される対象になるだろう」と懸念を示し、香港市民に街頭で抗議するよう呼びかけました。
「一国二制度」 英国の植民地だった香港は、1997年7月に中国に返還されました。90年に制定された基本法には行政・立法・司法などの分野で「高度な自治」がうたわれ、返還後50年間は資本主義制度を認める「一国二制度」は不変と規定。中国の一部でありながら、本土とは異なる制度が適用され、言論、報道、出版、宗教の自由なども盛り込まれました。