2020年5月18日(月)
きょうの潮流
17世紀イギリスの哲学者が説いた思想は後のアメリカ独立宣言やフランス人権宣言に強い影響を与えたといいます。現在の基本的人権の尊重にもつながるジョン・ロックの『統治二論』です▼王権は神から授かったという説を批判し、国民主権や三権分立を唱えました。その著書の一節が時の権力者に突きつけられました。「法が終わるところ、暴政が始まる」。元検事総長ら検察OBが法務省に出した検察庁法の改定案に反対する意見書です▼「検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図している」。この法案の問題点を指摘し、すべての声を結集して阻止することを呼びかけています▼政府の強権的なやり方に現職の裁判官も「まともな法治国家とはいえない」と、メディアで異例の批判。検事としてロッキード事件を担当した堀田力さんも、森友や加計のような事件があったときに検察は動かないようにする、それしかないと▼いま「桜を見る会」をめぐり、全国の弁護士や法学者が公選法違反などの疑いで安倍首相らの告発状を東京地検に提出しようとしています。こうした疑獄を裁くことは国民にたいする司法の責務です▼長い時をかけてつくり上げてきた政治や社会のかたちを逆戻りさせる歴史の冒とく。ロックは新しい統治の姿を打ち立てるのは人民だと主張しました。「自分たちがよいと考えるところに従って、決定する権利をもつことになるのである」