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2020年5月4日(月)

主張

コロナが問う世界

根本から転換が迫られている

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界のあり方について議論が高まっています。経済のグローバル化にともなってウイルスが世界に広がる危険は以前から警告されていました。にもかかわらず各国と国際機関の対応は立ち遅れ、短期間にまん延してしまいました。大きな原因として指摘されているのが、大企業のもうけを何より優先する新自由主義、市場原理主義です。利潤第一の社会では人の命を守れないことが浮き彫りになりました。命と暮らしを守る社会はどうあるべきか、変革に向けて何が必要かが問われています。

命を最優先の経済社会に

 「先進国」と言われる国で医療崩壊が起きました。イタリア、スペインでは緊縮財政政策による公的医療の弱体化が原因として批判されています。両国では欧州単一通貨ユーロに参加するために欧州連合(EU)が決めた財政赤字削減の基準を満たすため1990年代から医療、社会保障の公的支出が犠牲にされてきました。イタリアでは人口千人当たりの病床数が半減しました。国民皆保険制度がない米国では十分な医療を受けられない貧困層に多くの死者が出ていることが問題になっています。

 日本の医療体制も薄氷の上にあります。人口千人当たりの医師数はイタリア、スペインを下回り、主要7カ国(G7)中最少です。医師数を抑え込み医療機関を経営苦に追い込み、感染症対策の要となる保健所を減らしてきた日本の社会保障政策が、国民の命を危うくしているのです。社会保障削減の政治からの転換が急務です。

 国境を超える感染症には世界全体で対策をとらなければなりません。医療が不十分な発展途上国には支援が必要です。大手製薬会社は途上国でさまざまな感染症が頻発していた時、資金回収や利益を考えワクチン開発には消極的でした。今後人類はまた別のウイルス感染症に襲われる可能性があります。常に備えるために、今回の教訓をもとにして国際協力を強化する必要があります。これも金もうけ最優先ではできないことです。

 エイズ、結核、マラリアの三大感染症は途上国を中心に新型コロナウイルス以上に命を奪っています。人命がお金で左右されることのない世界をどう築くか、真剣に考えなければなりません。自然環境を破壊する気候変動への対策や格差・貧困をなくす課題の解決は急務です。

 コロナ危機対策で各国は巨額の財政支出に踏み切っています。財源負担をどうするか、税の集め方、使い方が問われます。コロナ後に国民に負担増を押し付けるやり方では、経済は回復しません。大企業、富裕層が優遇される税制を改革し、能力に応じて負担する税制を確立しなければなりません。コロナで富を得た巨大企業もあります。多国籍企業の税逃れを許さない公正な課税制度も不可欠です。

対立を広げる浪費でなく

 税の使い方については軍事費の削減が欠かせません。ストックホルム国際平和研究所によると、世界の軍事費は2019年に1兆9170億ドル(約205兆円)と桁違いの大きさです。この10年で最大になりました。コロナ危機は国際連帯の緊急性を示しました。対立、分断を広げる軍拡に財政を浪費するのでなく、命を守る施策に充てることが求められます。


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