2020年4月28日(火)
紛争下のイエメンにコロナ感染者
拡大なら「大惨事」
機能する医療施設 半数のみ
【カイロ=秋山豊】長年続く紛争で医療や水道、衛生施設が破壊されている中東のイエメンでは、新型コロナウイルスの感染が広がれば対処する体制がとれないと、医師や支援団体の関係者が強い危機感を抱いています。
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イエメンでは10日に初めて新型コロナの感染者が確認されました。北部サアダ県に住むアリさん(26)は本紙の電話取材に、「空爆やロケット弾で多くの人が殺された。病院も破壊され、ウイルスに感染しても確認できない」と語りました。紛争の一方の当事者フーシ派は、サウジアラビアが今月初めにも同県の国境付近を空爆したと主張しています。
国際NGOのセーブ・ザ・チルドレンによると、同国で完全に機能している医療施設は半数だけです。人口約3000万人に対し、集中治療室のベッドは700床、人工呼吸器は500台しかないといいます。
首都サヌア近郊にある病院の医師ムジャヒド氏(45)は「感染が広がれば、現状の医療体制では命を救えない患者が大勢出る。どういう事態になるか想像がつかない」と嘆きます。
同国では2015年、イスラム教シーア派武装組織のフーシ派が大統領宮殿を制圧。逃れたハディ暫定大統領を支えるサウジ主導の連合軍が軍事介入しました。国連によると、紛争下で約1800万人が安全な水と衛生施設を使えず、コレラがまん延しています。約1000万人が飢餓の一歩手前にあります。
セーブ・ザ・チルドレンは、栄養不良状態の子どもは免疫力が非常に低下していると指摘します。現地の広報担当シャラフディン氏は「子どもたちはすでに爆撃や飢え、病気に苦しんでいる。コロナの感染が広がれば持ちこたえられない。大惨事につながる。直ちに紛争をやめ、政治的解決策を見つけるよう求める」と訴えました。