2020年4月27日(月)
コロナ ゼネコン工事中止 「一人親方」悲鳴
「『休め。連休明けに戻れ』だけでは…」
東京土建「内部留保使ってでも補償を」
新型コロナウイルス感染拡大による国の緊急事態宣言を受け、ゼネコン各社に工事中止の動きが広がっています。下請けで現場作業を担ってきた自営の職人「一人親方」が仕事を失う事態となり、「生活できない」と悲鳴が上がります。労働組合は「ゼネコンは補償するべきだ」と指摘します。(安川崇)
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「いきなり解雇を言い渡された気分です」
東京都在住の40代の男性が公園で語ります。オフィスビルやマンションの建設現場で、空調設備のダクトの施工を手掛けてきました。今年2月からは、大手ゼネコン・清水建設が元請けの都内のタワーマンション建設現場で、週5日ほど働いてきました。
今月13日午前。その日は別の現場で作業していた男性に、清水の現場で一緒に仕事をしている作業員からLINE(ライン)で連絡が入りました。
「明日から現場ストップになりました。5月6日までとりあえずストップです」
これまで、元請け側からの連絡はこの情報だけ。「それだけ?と言いたくなる。補償の話は聞いていない。別の現場を探そうと走り回っているが、簡単ではない」
清水建設は同日、社員3人の感染と、うち1人の死亡を発表。緊急事態宣言の対象地域での作業所について「原則として宣言終了まで閉所」とする方針を示しました。
独立した矢先
男性の場合、別の現場での仕事は月に1~2件程度で、清水の現場が収入の柱でした。報酬は出来高で請求します。「4月分は十数万円しか入らないだろう」と肩を落とします。
以前は建設会社に勤めていましたが、今年1月に独立。「なんとか仕事を軌道に乗せて、余裕ができたら貯蓄も始めようかと思っていた矢先だった」
業界大手・準大手では、西松建設が8日に「工事中止・現場閉所」を表明。その後、大林組や鹿島建設なども施工中断や現場閉所の方向を打ち出しています。
「感染拡大防止を考えると、この判断そのものは理解できる」と男性は語ります。現場では数百人が働きます。プレハブの「詰め所」に並べられた長机での食事や休憩時には、「隣の人との距離は20~30センチ」だといいます。
「感染の不安は正直、ある。ダクトを一人で持ち上げて設置することはできず、何人かで作業する。『密』な距離での仕事にならざるを得ない」
生活できない
工事中止はやむを得ないとしても、問題は生活の保障。政府が打ち出す給付金も詳細は未定です。
「ただ『休んでください。大型連休明けに戻って来てください』だけでは、その間の生活が成り立たない」
建設労働者でつくる東京土建一般労働組合には、男性と同様の不安を訴える声が多数寄せられているといいます。担当者は「ゼネコンは下請けと労働者を使い利益を上げてきた。内部留保を吐き出してでも補償するべきだ」と話します。
国土交通省は17日、緊急事態宣言下での工事の一時中止・延期について、建設業者・団体向けに「下請負人や技能労働者の事業や生業(なりわい)の継続に支障が生じることがないよう十分な配慮」を求める通知を出しています。
清水建設は取材に「通常通りの工事が再開した時にはすぐに戻ってもらえるよう、取引業者には最大限の配慮をして対応する」と回答しました。