2020年4月27日(月)
主張
医療崩壊の阻止
政府の財政支援は全く足りぬ
新型コロナウイルス感染者の急増で、医療体制がひっ迫しています。市中感染が広がり、各地の病院で院内感染も相次いでいます。救急搬送を受け入れられない病院が後を絶たないなど、医療崩壊は始まりつつあります。ところが安倍晋三政権の対策は切迫した事態を打開できる内容ではありません。補正予算案でも、急を要する検査体制強化や医療現場への本格的支援の財政措置は極めて貧弱です。これでは医療崩壊は止められません。国民の命を守るため、検査・医療に投じる予算規模の抜本的拡大に踏み切ることが急務です。
PCR検査拡大を早急に
感染経路の分からない感染者が多数となる中、検査体制の根本的な改革・強化は喫緊の課題です。遅れに遅れているPCR検査の現状を直ちに改め、必要な人を速やかに大規模に検査できる仕組みへ転換することが不可欠です。
東京都医師会は自治体などと協力し、各地にPCR検査センターを立ち上げています。この取り組みは、検査が迅速にできるようになるだけでなく、保健所を介さない検査が可能になることで、多忙を極める保健所の負担を軽くすることができます。検査を担ってきた医療機関が、これまでより実施数を減らせることになり、より治療に専念できます。コロナ患者の重症化を防ぐうえでも、医療機関を感染リスクから守るうえでも、PCR検査センターを全国に広げることは切実な問題です。
安倍首相は「各地の医師会の協力も得て検査センターを設置します」(17日の記者会見)と述べました。ところが中身がともなっていません。PCR検査センターにかかる費用は都内だと1カ所で月約5000万円とされています。仮に都内で20カ所とすると月約10億円、3カ月で約30億円です。全国で本格的に設置するとなると数百億円が必要になります。ところが安倍政権が決めた補正予算案では同センターのための予算はゼロです。これではセンターの設置を加速させることも、検査数を増やすこともできません。陽性となった軽症者の安全な宿泊療養施設の確保・増設もふくめ、多くの予算を投じる姿勢に転じるべきです。
医療機関への国の財政支援も決定的に不足しています。各地の病院はコロナ対策で必死に奮闘していますが、一般患者の受診抑制で大幅減収のところが続出し、「資金が底をつく」と悲痛な声も上がっています。コロナ患者の受け入れで、1病院で月約2億円の減収になるとの試算もあります。コロナ患者を受け入れる全国約1200の病院に当てはめて計算すると、半年で1・4兆円にものぼります。これに対し補正予算案では、コロナ対応の医療のために創設する「緊急包括支援交付金」は1490億円です。桁が違います。数兆円規模の予算で医療に手当てしないと危機は食い止められません。
現場に行き渡る対策こそ
安倍首相は「診療報酬を倍増する」と言いましたが、対象は重症患者受け入れ病院が中心で、多くの医療機関には届きません。全国知事会は、一般病床を含め医療機関の実情を踏まえた診療報酬増額、国庫補助などを求めています。この声にこたえるべきです。医療従事者の防護具もまだまだ不足しています。苦闘する現場に行き届く強力な支援を加速する時です。