2020年4月25日(土)
主張
検察庁法改定案
どさくさ紛れの強行許されぬ
新型コロナウイルスによる危機を打開するため国を挙げて力を尽くすことが求められているさなか、安倍晋三政権が、憲法の基本原理である権力分立を破壊する検察庁法改定案の成立を画策しています。国民の命と暮らしを最優先で守らなければならない時に、文字通り「不要不急」の悪法をどさくさ紛れに押し通そうなどというのは到底許されません。
憲法の基本原理脅かす
今月16日に審議入りした検察庁法改定案は、検察官の定年を63歳から65歳に延ばすものです(最高検検事総長は現行も65歳)。同時に、検事総長を補佐する次長検事、高検検事長、地検検事正らは63歳を機に役職を退くと規定する一方、政府が「公務の運営に著しい支障が生じる」と認める場合には63歳を過ぎても、さらに65歳の定年を超えてもその役職にとどまれる特例を設けました。
同改定案と一括で国会に提出された国家公務員法(国公法)改定案が同じ趣旨の「役職定年制」を盛り込んだことに伴う措置です。この特例により、政権の意にかなう検察幹部は63歳以降も続投させ、意に沿わない場合は役職を解くことができるようになります。
検察官は、強大な捜査権を持つとともに起訴の権限を独占し、準司法官的な役割を果たしています。首相ら政権中枢の政治家も捜査対象にするため、政治からの介入を許さないようにすることがとりわけ重要です。ところが、改定案は、時の政権による検察官人事への恣意(しい)的な介入を可能にします。検察の政治的中立性や独立性を脅かすものです。
今回の改定の発端は、定年目前の黒川弘務東京高検検事長の勤務延長を安倍政権が1月に突然閣議決定したことです。安倍政権は具体的な理由を説明しておらず、官邸に近い黒川氏を検事総長に就任させるためとみられています。
現行の検察庁法は、検察官人事への政治介入を排除するため定年延長の規定を設けていません。それにもかかわらず、安倍政権は、現行の国公法にある定年延長規定を根拠に黒川氏の勤務延長を決めました。政府自身がこれまで、検察官には国公法の定年延長規定は適用されないとしてきた解釈に反するものです。黒川氏の勤務延長が違法であることは明らかで、安倍政権が「解釈を変えた」と開き直っていることは法の支配を揺るがす重大問題です。
検察庁法改定案には昨年10月に内閣法制局が一度了承した別の案がありました。同案は、検察幹部が63歳で役職を降りることを規定しただけで、それ以降も役職を続けられる特例はありませんでした。当時の法務省の説明資料はその理由について検察官は「柔軟な人事運用が可能」で「公務の運営に著しい支障が生じることは考え難い」からだとしていました。
速やかに撤回すべきだ
安倍政権が黒川氏の勤務延長のため持ち出した国公法は「公務の運営に著しい支障が生ずる」場合に定年延長を認めるとしており、法務省自らの説明をも覆すものでした。しかも、そうした安倍政権の閣議決定を合法化するため検察庁法改定案にも新たに特例を盛り込んだのです。全くでたらめです。
黒川氏勤務延長の閣議決定と検察庁法改定案は速やかに撤回すべきです。