2020年4月21日(火)
主張
コロナ国会の審議
不急の法案持ち出す時でない
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、国民の命と暮らしを守るために、政府にしっかり対策を取らせることが、いま国会の最も重要な役割です。その点で、先週審議入りした年金制度改定法案や、検察庁法改定案を含む国家公務員法等改定案などは、このタイミングで持ち出す必要がありません。しかも、これらの法案は、国民の暮らしと民主主義にとって重大な内容を抱えています。いまやるべきは問題だらけの法案の審議ではありません。深刻さを増す新型コロナへの対策に知恵と力を結集するときです。
重大な中身の悪法が次々
年金制度改定法案は、野党が審議見送りを求めていたにもかかわらず、14日の衆院本会議で審議入りしました。公的年金の受け取り開始時期を60~75歳(現行70歳まで)に拡大することなどが盛り込まれています。年金を実質削減するマクロ経済スライドはそのままです。問題ある仕組みを放置し、老後のお金を確保するのは国民一人一人の「自己責任」でという安倍晋三政権の考え方に基づく制度改変です。国民が願う「頼れる年金制度」にはつながりません。
国民の将来の人生設計に直結する年金制度の改変の議論を、この時期に急ぐ理由は見当たりません。いま政府が全力を注ぐべきは、新型コロナの感染爆発を抑え込み、医療の崩壊を止めるための緊急対策です。年金制度改定法案を担当する厚生労働省は、新型コロナ対策を中心となって担うべき官庁です。すでに同省の職員は多忙を極めています。新型コロナへの対応に専念してもらうためにも、同改定法案の審議を推し進めることはあまりに問題です。
さらに与党は16日の衆院本会議で、検察庁法改定案を含む国家公務員法等改定案の審議入りを強行しました。検察官の定年年齢を引き上げるなどの検察庁法改定案は、内閣による検察人事への介入を恒常化させかねない極めて危険な法案です。安倍内閣は今年1月、従来の政府解釈を翻して、首相に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の定年を延長する閣議決定をしました。改定案は、この違法行為を追認し、正当化するものであり、検察の独立性の根幹を大本から揺るがすものです。撤回すべき法案です。新型コロナのどさくさにまぎれて、悪法を押し通すことなど絶対に許されません。
16日に衆院を通過した国家戦略特区法改定案(スーパーシティ法案)も、重大な問題をはらんでいます。人工知能(AI)やビッグデータなど先端的な技術を使った事業を官邸主導の「規制緩和」で導入するというものです。個人情報を収集・活用することは住民のプライバシー保護や権利がないがしろにされる恐れが濃厚です。特定の企業を優遇する仕組みを強化する同法案は不必要です。
コロナ対策への専念こそ
新型コロナの感染者数が地方でも増加し、緊急事態宣言が全国に拡大される切迫した事態です。感染爆発を抑えるために、外出自粛・休業要請と一体の補償、検査・医療体制の抜本強化など国会でやるべきことは山積しています。政府は「不要不急」の法案の審議を押し付けるべきではありません。国民の不安に乗じ、緊急事態条項にからめた改憲論議の促進を企てる首相や与党の動きは論外です。