しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年4月18日(土)

一律休校下 知恵絞り卒業式準備

北海道 元中学校校長の手記

心込めて送り出したい

 新型コロナウイルスの感染拡大で学校は長期の休校、再開後には感染者を出さないための対策など厳しい対応に追われています。全国に先駆けて一律休校が行われた北海道で3月末まで中学校の校長を務めた男性に手記を寄せてもらいました。


写真

(写真)男性が中学校の校長を務めていた町の海岸風景

 私はこの3月、37年間の教員生活の幕を閉じ退職しました。最後の2年間は北海道の海に面した小さな中学校に校長として勤務しました。地域全体が子どもたちを大切にし、子どもたちもそれを肌に感じながら生活する「地域の中の学校」です。

 2月下旬。鈴木直道知事が新型コロナウイルスの感染拡大防止を掲げ1週間の一律休校を要請した当初、私は、そこまでしなくてもよいのではないかと冷ややかに見ていました。

 しかし、その直後に人口数千人のわが町からも感染者が出たことで状況は一変し、町内に緊張感が広まりました。町教育委員会はさらに1週間の休校を決定。そして安倍首相の要請による全国一律休校となりました。

 3月は退職の余韻に浸るいとまもなく、家庭訪問、分散登校、卒業式をどうするかを先生方と知恵を巡らしながら相談しました。

 道教委の示す卒業式の持ち方に沿えば、式は卒業生・保護者・教職員のみで実施。「この方針は大規模校を想定している。本校は小規模校なのだから在校生を呼んでもいいのでは」という意見も、「道教委の示す方針と異なる方法をとり感染者が出た場合、誰が責任をとるのか」という町の教育委員会の指摘に二の句を継ぐことができませんでした。

分散登校を活用

 そんななかでも心をこめて卒業生を送り出そうと努力しました。

 従来であれば在校生が担う式場の装飾は先生方が行い、卒業生が式で歌う合唱曲「手紙~拝啓十五の君へ」を先生方もパートに分かれて練習し当日に臨みました。在校生の送辞は事前にビデオ撮影。当日はビデオメッセージとしてスクリーンに映し出しました。分散登校を活用し、卒業生の教室の装飾を在校生が何とか手がけることはできました。

 当日、卒業生は先生方と在校生の祝意を感じ取りながら胸を張って巣立っていきました。

 一律休校期間中、子どもは家から出ることができなかったため、少々ストレスを抱えていたものの、保護者の仕事に不都合が出た事例はありませんでした。それは、近隣に親戚縁者が住まいしており、子どもの面倒を見てくれる方が身近にいたためではないかと推察しています。

 都会にはない親族関係が、まだここには残っているということでもあります。そのことが子育て、子どもの成長を陰ながら支えていることを改めて理解することになりました。

2週間で再休校

 4月、学校が再開されましたが北海道ではコロナ感染の「第2波」の勢いが現場を当惑させています。

 感染防止のため、道教委の方針にのっとり現場は「奮闘」していました。換気と消毒はもとより、授業は1クラスを二つに分けて実施。給食も二つに分けて前方を向きながら。しかし教員の定数はそのままなのですから、先生方の授業時数が増えることでの負担は計り知れません。

 そんな中、鈴木知事は16日、再び全道一律休校を要請しました。わが町の学校もわずか2週間でまた休むことになり、困惑しています。今後、国や行政はさまざまな方針やガイドラインを示すことになると思いますが、それは科学的知見に基づくことはもとより、地域の実情・校種・学校規模等に応じて各学校が自主的に判断できる弾力的運用が可能なものとなることを願ってやみません。


pageup