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2020年4月15日(水)

救え!ミニシアター コロナ休業 存続の危機

命を考える ドキュメンタリーで発信

支援の署名 なくてはならない映画館

 「ミニシアターを救え!」と署名や支援の輪が広がっています。小さな映画館「シネマ・チュプキ・タバタ」も緊急事態宣言を受けて休館に。3月末、代表、平塚千穂子さんから「『えんとこの歌』の初日ですが予約はゼロ。でも、ぜひ観(み)てほしい」とメールが。休館の直前、行ってきました。(都光子)


東京の「シネマ・チュプキ・タバタ」

 東京都北区、JR田端駅から歩いて5分。日本で唯一のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」があります。

音声ガイド・字幕

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(写真)平塚さん

 代表の平塚さんらが自前で音声ガイドと字幕をつくり、目や耳の不自由な人が映画を「観る」ことができます。振動を体で感じられる「抱っこスピーカー」の貸し出しもあります。

 20席ほどですが、車いすスペースや、人の大勢いる場所が苦手な人のための完全防音室もあります。「だれもがいつでも安心して、一緒に映画を楽しむことができます」と平塚さん。

 2001年から目の不自由な人たちとともにボランティア団体をたちあげて、映画を楽しめる環境づくりに力を注いできました。念願かなって募金が集まり、ユニバーサル映画館が完成。今年4年目に入りました。

 上映作品は多岐にわたります。「この世界の片隅に」「主戦場」「万引き家族」の話題作も。入場料は一般1500円。介助者は無料です。

 新型コロナウイルス感染防止として換気をしっかりおこない、入場時には一人ひとりに手指のアルコール消毒を。「それでも積極的な宣伝は控えているので、1日に数人程度に落ち込んでいます」と平塚さん。「でも今回だけはぜひ観てほしかったんです」

介助者との日々

 その映画とはドキュメンタリー映画「えんとこの歌」です。上映初日の4月2日。観客は5人。上映後、監督の伊勢真一さんがあいさつにたち、映画にかけた思いを熱く語りました。

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(写真)上映語、語る伊勢さん

 遠藤滋さんという脳性まひで寝たきりの男性が主人公。自ら介助者のネットワーク「えんとこ」を組織し、24時間介護を受けながら1人暮らしをしています。6畳2間の部屋で介助者の若者たちとすごす日々。排せつだけでも2時間かかります。歯を磨くなどの口腔(こうくう)ケアもゆっくり丁寧に2時間。

 排せつシーンの撮影は最初断られました。が、遠藤さんは思い直します。「すべてをさらして生きている。これからも、ありのままの命を生かしあいながら生きることこそを『えんとこ』からメッセージしたいのだ」と、伊勢さんにあてたメールで書いています。

 朝、痛みで目が覚め、薬を腹部から入れてもらっている間も苦渋の表情。介助者との会話のもどかしさ。それは恋心? 音楽を聴き、1杯のコーヒーをストローでゆっくり、おいしそうに飲む表情が印象的です。

 55歳から詠み始めた短歌。介助者が消え入りそうな声をひろい、つくっていきます。相模原市の障害者施設での事件を受けて「見知りたる男の刃物を振り上げて 迫り来るをわが夢に見つ」と歌いました。

 「テレビも新聞もSNSも新型コロナウイルスばかり。その状況をしっかり受けとめながら、かつ“淡々と”自分らしい日々を生きることが今、大切なんじゃないか」と伊勢さん。「こういうドキュメンタリー映画は、ミニシアターや自主上映で届いていく。ここは、なくてはならない存在です」

 平塚さんは、さまざまな障害者と知り合い、ともに考えるきっかけをと、音声ガイドをつくりました。緊急事態宣言を受け、5月15日まで臨時休館をよぎなくされました。「大きな打撃です。誰も排除しない映画館を、これからもみなさんと続けていきたい」(シネマ・チュプキ・タバタhttp://chupki.jpn.org/

 ※署名「ミニシアターを救え!」は存続の危機にあるミニシアターにたいし、緊急的な支援を求めています。自粛要請や感染拡大防止対策によって生じた損失を補てんすることによる支援と、収束後に集客を回復させるための広報活動の充実、ゲスト招聘(しょうへい)などのイベントに対する支援です。インターネットの署名サイトで賛同者を募っています。


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