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2020年4月15日(水)

名湯の危機 震災以上

キャンセル3.9万件 増税・台風に続きコロナ…

飯坂温泉 福島市

 新型コロナウイルス防止のための自粛呼びかけによって、全国の観光業に深刻な影響が広がっています。奥州三名湯にも数えられる福島市の飯坂温泉の旅館の館主らは、観光客の激減と感染への対応に、東日本大震災後以上の危機感を抱いています。(高橋拓丸)


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(写真)飯坂温泉旅館協同組合の紺野理事長

旅館経営者「補償を」

 温泉旅館のほかに九つの共同浴場を有する飯坂温泉。多くの観光客でにぎわうはずの週末ですが、飯坂線終点の「飯坂温泉駅」で降りる乗客は10人ほど。駅前は閑散とし、川沿いの途中途中にある無料の足湯にも利用者の姿はありませんでした。

 「きょうはまだ1人しか乗せていない。こんなのは初めてだ」と話すのは、駅前で利用客を待っている50代のタクシー運転手。「地元の人の日常の足だけで、観光客の利用はほとんどない。当面はこうだろうから、不安しかない」といいます。

 約40のホテル・旅館が加盟している飯坂温泉観光協会の齋藤利香子事務局次長は「春は観光シーズンでしたが、花ももの里(庭園)は開園を中止し、宿泊費割引の企画なども延期になりました」と話します。

 飯坂温泉全体で1カ月の宿泊キャンセル数は約3万9000件にのぼり、休業する旅館も少なくありません。

終わり見えず

 飯坂温泉旅館協同組合の紺野正敏理事長は「昨秋の繁忙期が消費税増税や台風で苦戦し、そこにきて今度は新型コロナウイルスです。学生の大会や合宿が次々中止になった影響も大きい」と話します。

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(写真)閑散とした週末の温泉街=11日、福島市

 紺野理事長の旅館も、3月から宿泊を休業し、日帰り入浴のみの営業に。その利用者も、これまで平日50人ほどだったのが十数人程度に落ち込んでいます。「20人ほどいる従業員には自宅待機してもらっています。今は自己資金で持ちこたえているが、終わりが見えないのが厳しい」

 操業資金の融資についても、組合では今の状況がいつまで続くか分からない状況で借りることに不安が広がっているといいます。

 飯坂温泉のホテルのスタッフから今月、感染者が1人出ました。紺野理事長は「もしうちだったらと思うと、外から来るお客様が怖いという気持ちもあります…」と胸の内を明かします。

全国が被災地

 「震災以上の危機です」というのは、旅館を営む60代男性。「当時は避難者や作業員の利用もあったし、『福島をみんなで助けよう』という空気がありました。しかし今回は全国が被災地ですし、『頑張って営業しているのでぜひいらしてください』と言うこともできず、八方ふさがりです」と心境を語ります。

 男性の旅館も3月から不定期に休業を続けており、今後の対応のめどは立っていません。「国でも県でも、『損失はちゃんと補償するから絶対に休んで』と言ってくれるのが一番ありがたい」


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