2020年4月9日(木)
「甚大な影響」認めつつ補償拒否する首相
命守る真剣さ問われる
安倍晋三首相は新型コロナウイルス感染拡大での「緊急事態宣言」発令後の記者会見(7日)で、感染拡大防止のために国民への自粛要請の「お願い」を繰り返す一方、命と暮らしを守る責任を放棄する無責任な姿勢を示しました。
安倍首相は、国内の感染拡大のペースがこのまま続けば2週間後に1万人、1カ月後に8万人を超えると指摘。「医療現場はまさに危機的な状況だ。医療への負荷を抑えるために最も重要なことは、感染者の数を拡大させないこと」だと強調し、人と人との接触を7~8割削減するよう「行動変容」を求めました。
人と人との接触を最小限に抑えることは、この局面で必要なことです。他方で、安倍首相は、自粛要請に伴う損失の補償を拒否しました。
会見で安倍首相は、自粛要請によって「何の咎(とが)もないにもかかわらず、甚大な影響が及ぶ」ことを認めながら、損失は直接自粛を要請した業界にとどまらず、さまざまな取り引きをしている業界にも大きな影響が出るとして、個別補償を拒否しました。
これは自粛による影響を“直接”的な影響を受ける業者と“間接”的な影響を受ける業者とに分けて、両者を同じように補償することはできないという論法で、まったく理屈になりません。
影響が甚大だというならなおさら補償は必要です。補償がなければ、生きるために人々は仕事に出るなどして、結局自粛は徹底されず、「接触の7、8割減」とそれによる「医療への負荷の抑制」も「絵に描いた餅」となります。
7日の参院議院運営委員会で日本共産党の小池晃書記局長の追及に対し、安倍首相自身が「全部補償しますといえば効くのは当然だ」と述べた通り、補償があってこそ感染防止策は実効性を持ちます。国が自粛を要請する以上、補償も直接・間接問わず行われるべきです。
「自粛要請するなら補償すべき」(黒岩祐治神奈川県知事)というように、“自粛と補償はセットで”は党派を超えた「当たり前」の主張となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大から国民の命を守るため、自粛による犠牲を最少にすることこそ政治の役割です。安倍首相には、国民の命を守り抜く真剣さが厳しく問われています。(日隈広志)