2020年4月6日(月)
主張
保育の安全・安心
現場の切実な願いにこたえよ
新型コロナウイルスの感染拡大で、各地の保育園は例年と全く異なる対応を迫られる新年度を迎えています。年度初めの忙しい業務に加え、通常よりさらに厳しい感染防止対策が必要となる中、不足するマスクと消毒液の確保や、十分な人手をそろえるために苦労する保育園も少なくありません。感染への強い不安を抱えながら、子どもを守ろうと現場は必死です。
一方、今年も「保育園落ちた!」という父母の悲痛な叫びはSNS上であふれており、待機児問題の打開が依然として重要な課題であることを浮き彫りにしています。
行き詰まる待機児ゼロ
「子どもを保育所に預けて働かないと、暮らしが成り立たない」という訴えは切実です。
2020年4月からの保育所入所を申し込んだ人は、政令市を中心に全体的に19年の春よりも増加傾向を示しています。1次選考結果では、政令市で不承諾数が申し込んだ人の3~4割にのぼっています。昨年よりも待機児数が増加した自治体も少なくありません。
安倍晋三政権は13年に“5年間で待機児童ゼロ”にすると宣言しました。それが行き詰まると目標の達成を20年度末までに先送りしました。しかし、現状では、実現の展望はありません。
保育を必要とする子どもの人数が増えているのに、施設整備が追い付かないのは深刻です。公立認可保育所の大増設に踏み切らないなど安倍政権の“安上がりの保育政策”の行き詰まりは明白です。
保育所増設の大きなネックの一つが深刻な保育士不足です。保育士が集まらない状況は全国共通の悩みです。やりがいはあっても過酷な働き方と劣悪な処遇により辞める保育士も相次いでいます。解決のために処遇改善が急務です。そのためには、保育士の配置基準の引き上げや、賃上げが保障できるような保育の費用算定基準(公定価格)の改正が必要です。政府は現場の声にこたえるべきです。
16年度から待機児解消の目玉として導入された企業主導型保育所も問題です。設置基準は認可施設より低く、自治体も設置・監督に関与しませんが、政府は整備目標の中に位置づけました。19年度末に全国で3817施設(8・6万人分)と急増する中で、補助金の不正受給や定員充足率が極端に低いことなどが次々と発覚し、国民の不信を広げています。
国に報告された保育施設などでの子どもの重大事故は1221件(18年)と3年で3倍化しました。公的責任による保育所整備を怠り、安全基準の緩い施設を「受け皿」として拡大してきた安倍政権のやり方と無縁とはいえません。
「保育の質」の確保は、新型コロナ感染防止の上からも重要です。政府は、コロナ感染対策をめぐり保育現場が抱える多くの苦難の解決へ支援を強めるべきです。
今こそ転換をはかれ
全国の保育関係者は毎年、保育施策の拡充と予算の増額を求める国会請願署名に取り組んでいます。昨年12月、この請願の一部が9年ぶりに参院本会議で採択されました。170万人を超える署名を集め、国会要請行動をはじめとする粘り強い努力の中、保育の充実が与野党を超えて一致する課題になったことは画期的です。公的責任による保育制度の拡充へ転換を図る時です。