2020年4月2日(木)
主張
削減目標据え置き
気候の危機を直視できぬ異常
安倍晋三政権は、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に基づく温室効果ガス削減目標を引き上げないまま国連に提出しました。日本が据え置いた「2030年度に13年度比で26%削減」という目標は、パリ協定が求める温暖化対策の水準に比べ、あまりに低すぎるものです。国内外から大幅な目標引き上げを求める意見が相次いでいたにもかかわらず、その声に背を向けたことは重大です。「気候危機」という人類が直面している死活的課題への危機感がまったくありません。安倍政権は姿勢を改め、削減目標を大幅に引き上げるべきです。
国内外の批判に背向けた
日本政府が決定した「30年度に13年度比で26%削減」という目標は、国際的な基準である1990年比に換算すると、わずか18%の削減にすぎません。これまで削減目標を90年比40%にしてきた欧州連合(EU)は、50~55%削減へ引き上げる「欧州気候法案」を発表しました。英国の目標も57%削減に法改定ずみです。日本の目標の低さがますます際立ちます。
パリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べ2度を下回り、できれば1・5度以内に抑える目標を掲げています。その実現には、各国が2030年度の削減目標を大きく引き上げることが必要です。これまで各国が国連に提出している目標のままでは、今世紀末には3度以上の気温上昇につながるからです。1・5度上昇でも深刻な熱波、嵐、水不足などが引き起こされることは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が警告しています。3度上昇となれば、破局的事態に陥ってしまいます。
20年は、パリ協定に基づき、各国が削減目標を見直す5年に1度の年です。各国には、気候の危機を直視し、事態の打開へ向けた真剣な取り組みを抜本的に強めることが厳しく迫られています。
国連は11月に英国グラスゴーで開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向け、上積みした削減目標の再提出を各国に求めてきました。19年9月の国連気候行動サミットや同12月のマドリードのCOP25では、目標引き上げを表明する国が相次ぎました。一方、中国、米国、インド、ロシア、日本の上位の排出国の後ろ向きの姿勢があらわになりました。2月の記者会見でグテレス国連事務総長は、日本を含むこれらの国を名指しし、温暖化対策の先頭に立つことを強く訴えていました。気候変動対策に取り組む多くの市民団体や若者らも政府に目標上積みを要求してきました。この指摘にも耳を貸さず、異様に低い目標に据え置いた安倍政権に「世界に通用しない」「背信行為」と批判が上がっています。
石炭火力の推進やめよ
政府は目標再提出の際の公表文書に、これから「意欲的な数値」を目指すなどと記しましたが、目標引き上げの具体的裏付けはありません。それどころか削減目標はCO2排出量が多い石炭火力発電の維持を前提にした「エネルギーミックス(電源構成)」と「整合的に」と明記したことは大問題です。石炭火力を推進する安倍政権の立場の反映に他なりません。
あくまで石炭火力に固執し続ける安倍政権の無責任な姿勢が根本から問われています。