2020年3月24日(火)
主張
検察庁法改定案
政治介入許す仕組みづくりだ
安倍晋三内閣は、検察官の定年を65歳に引き上げる検察庁法改定案を国会に提出し、成立を狙っています。改定案は、検察幹部が役職を続けられるかどうかを内閣が決める特例規定を盛り込んでいます。これは、重大な改悪です。安倍内閣は今年1月、検察官の定年延長はできないとしてきた従来の政府解釈を覆し、首相官邸に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の定年を延長するという異例の人事を閣議決定しました。改定案の特例規定は、違法な黒川氏の定年延長を正当化し、時の政権が検察幹部の人事に介入できる仕組みをつくるものです。
内閣が役職継続を決める
検察庁法改定案は、定年を現行の60歳から65歳にする国家公務員法(国公法)改定案などと合わせて一つの法案として今月13日に閣議決定されました。
それによると、検察官の定年は現行の63歳から65歳に引き上げられます(最高検トップの検事総長は現行も65歳)。併せて、検事総長を補佐する最高検次長検事や全国に八つある各高検トップの検事長などは63歳を機に役職を降り、検事になる制度を導入します。
一方で、63歳以降も次長検事や検事長などの役職にとどまれる特例を設けています。国公法改定案が、同じ趣旨の「役職定年制」を盛り込んだことに伴う措置です。
しかし、両改定案には決定的な違いがあります。国公法改定案では、事務次官などの幹部が「役職定年」を迎えてもそのポストにいられる場合は「人事院規則で定める」としているのに対し、検察庁法改定案では、次長検事と検事長が引き続きとどまれるのは「内閣が定める事由があると認めるとき」としていることです。
特例規定によって、政権の意向に沿った次長検事や検事長は63歳になってもそのまま続投させ、意に反する人物はポストから外すことが可能になります。改定案が成立すれば、今後、黒川氏のような政治判断での勤務延長がまかり通ることになってしまいます。
検察庁法改定案は国会に提出されているものとは別に、昨年10月末に内閣法制局が一度了承した当初案がありました。同案は、次長検事と検事長が63歳になる際はその役職を降り、検事に任命されると規定していただけでした。63歳以降も同じポストにとどまれる特例規定はありませんでした。
法務省が昨年10月にまとめた説明資料はその理由について「(検察官は)柔軟な人事運用が可能」で、「公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考え難く、…(特例)規定を設ける必要はない」と明記していました。
閣議決定と法案の撤回を
ところが、安倍内閣は今年1月、従来の法解釈を百八十度転換し、2月で63歳の定年退職を迎える黒川氏について「重大かつ複雑、困難な事件の捜査、公判に対応するため」(森雅子法相)に必要だとして勤務延長を決めました。さらに、昨年10月の法務省の説明にも反して、検察庁法改定案に特例規定を盛り込みました。法治国家にもとる一方的な法解釈の変更とそれに基づく閣議決定を“合法化”しようとするものに他なりません。
司法の独立を脅かす黒川氏の定年延長の閣議決定と検察庁法改定案は撤回すべきです。