2020年3月14日(土)
スペイン 貧困で強制退去 抜本制限
“住居は権利” 草の根運動実る
適用対象拡大・猶予期間を延長
スペインで11日、家賃が払えない多くの貧困家庭に対する強制立ち退きを制限する政令が発効しました。立ち退き被害者の支援団体の要求が実現したものです。サンチェス連立政権の一角を担う左派連合ウニダス・ポデモスを率いるイグレシアス副首相は「市民社会からの圧力でスペインは前進する」と表明しています。(桑野白馬)
政府は、右派・国民党の前政権が制定した政令の対象より多くの困窮世帯を守る狙いです。
政府統計によれば、強制立ち退きの件数は年間5万件超に達しています。政府は、今回の決定で「2万9000以上の世帯が立ち退きを免れる」と推計します。
政府が10日に公布した政令は▽「貧困」と定義される世帯年収の上限を引き上げ▽「ひとり親世帯」の「子ども1人」の場合にも適用し▽猶予期間を現行の3年から4年に延長します。
同国では、2000年代後半から、バブル崩壊の影響で生活困窮者が負債を背負ったまま家を追い出される問題が多発。自殺者まで出る事態になりました。
立ち退き被害者を支援する草の根団体「住宅ローン被害者の会(PAH)」をはじめとする権利擁護団体は、街頭デモや政府要請で住居の権利保障を政府に要求。12年に当時の国民党政権が立ち退きを差し止める政令を公布するきっかけになりました。
政令は複数回にわたり改定されたものの、PAHは「適用世帯が限定されており、状況は改善してない」として再三にわたり改善を訴えてきました。
PAHは11日、声明を発表し「住居という基本的人権の擁護を掲げた運動の勝利だ」と強調。一方、被害者の生活再建の支援が不足しているとして「まだ完全な勝利ではない。引き続き要求を続ける」と表明しました。