2020年3月7日(土)
あす「国際女性デー」
同意なき性行為は暴行
スペイン政府 刑法改正案を閣議決定
8日の「国際女性デー」を前に、「男性優位主義による性暴力の根絶」を掲げるスペイン政府は、「同意のない性行為は性的暴行」と位置づけ、女性を性被害から守るための刑法改正案を閣議決定しました。高まる女性たちの声にこたえた形です。(桑野白馬)
性暴力撲滅 運動の成果
左派のサンチェス連立政権は3日、法案の概要について記者会見で発表。加害者による脅迫、暴力や被害者が抵抗した事実が証明されないと性的暴行罪が適用されない現行法の改正を目指します。薬などで意識を奪った状態での性行為は性的暴行と新たに認定。性的な暴言を含む幅広いセクハラ行為(性的嫌がらせ)にも罰則を設けます。
イレーネ・モンテロ平等相は会見で「同意のない性行為は性暴力だ」と強調。地元テレビのインタビューでは「被害者がどんな服を着ていたとか、どこを歩いていたかと問われ続ける必要はない。性暴力が正当化されることは決してない」と語りました。
同国ではこれまで、不同意の性行為でありながら、性的暴行罪より罪の軽い「性的虐待」罪が適用されるケースが相次ぎました。2016年の集団性的暴行事件の下級審では、明白な抵抗の意思が被害者に認められないとされ、性的虐待罪にとどまり、昨年11月の判決では、泥酔させられた14歳の少女が集団で性的暴行されたにもかかわらず、「被害者が無意識だった」ことで性的暴行罪が適用されませんでした。
相次ぐ不当判決に怒りが広がり、刑法改正を求め、街頭での抗議行動や集会が全国で繰り広げられました。法案は、性的虐待罪の定義を削除し性的暴行罪に統一します。
同国のさまざまな女性団体でつくる「3月8日委員会・マドリード」のサラ・ナイラ広報担当は4日の記者会見で、法案は「女性への暴力撲滅を求めた社会運動の成果だ」と評価。女性の権利拡大を訴える多様な運動団体の存在を念頭に「男性優位主義に対抗するとの共通の目的で結束してフェミニズム運動を続ける」と表明しました。
法案には、配偶者などパートナーからの暴力(DV)を未然に防ぐことや性暴力被害者の支援を目的とした24時間体制の対応センターを設置することも盛り込まれました。