2020年3月6日(金)
主張
河井夫妻秘書逮捕
首相と自民党の責任は重大
自民党の河井案里参院議員の公職選挙法違反疑惑で夫の河井克行前法相が辞任してから4カ月、ついに夫妻の秘書ら3人が逮捕される事態になりました。秘書らが有罪となれば、「連座制」が適用され、案里氏は失職する可能性があります。議員辞職に値する問題なのに、2人は説明責任を果たしていません。なにより問われるのは、克行氏を法相に起用した安倍晋三首相の任命責任です。首相は国会で追及されても「捜査中」であり、「コメントは控えたい」などと繰り返すだけです。首相と自民党の責任は重大です。
議席を金で買った疑い
案里氏陣営をめぐる公選法違反容疑は、昨年の参院選の広島選挙区の選挙で、案里氏側から車上運動員に、公選法で定められた規定額(日当1万5000円)を大幅に上回る報酬が支払われていたという買収の容疑です。車上運動員だけでなく、企業などを回って支持を働きかけていた別の運動員にも約96万円が渡されていたという疑いもあります。一般の選挙運動は無報酬が原則で、これも報酬なら、買収にあたります。いずれも明々白々な違法行為で、議席を金で買ったも同然です。
案里氏の選挙を事実上取り仕切っていたのは克行氏です。見過ごせないのは、案里氏の出馬自体が安倍首相と菅義偉官房長官の強い意向だといわれることです。首相補佐官などを務めた克行氏は首相側近の一人であり、案里氏は文字通り官邸の強力なテコ入れで当選しました。選挙前に、河井夫妻の選挙区支部に、ほかの自民党候補者とは桁外れの計1億5000万円もの選挙資金が振り込まれていたことも明らかになっています。公認した自民党の責任はもちろん、安倍首相の責任は免れることはできません。
ところが首相は“人ごと”です。今年1月、広島地検が河井夫妻の地元事務所などを捜索に入ってもまともに説明しません。3日に国会議員会館の河井夫妻の事務所が捜索されて、秘書ら3人が逮捕されても、「一人一人の政治家が説明責任を果たすべきだ」というばかりです。
克行氏自身にも選挙区内で、有権者にマンゴーやジャガイモなどを支援者に配っていたとされる疑惑が指摘されています。事実なら、これも公選法違反の買収です。案里氏はもちろん、克行氏の国会議員としての資格も問われます。
克行氏を、法秩序をつかさどる立場の法相に任命した首相の責任は明白です。首相は国会や国民の前での説明から逃げ続ける河井夫妻に説明責任を果たさせ、議員を辞職させるべきです。
政治を担う資格ない
案里氏の公選法違反疑惑が発覚して克行氏が法相を辞任したのは、昨年9月の安倍内閣の改造後、地元で高級メロンやカニを配ったなどと公選法違反疑惑が報道されて辞任した菅原一秀前経済産業相に続くものでした。その後も、カジノ汚職で秋元司前担当副大臣が逮捕されました。首相自身が政府主催の「桜を見る会」疑惑などで、厳しく追及されています。安倍政権の「モラル崩壊」と「政治とカネ」をめぐる疑惑まみれは深刻です。
自らの疑惑を含め、国民の信頼を失っている安倍首相に、もはや政治を任せることはできません。