2020年2月28日(金)
豪雨・河川氾濫の避難所で 愛媛県西予市
ほっこり 肉じゃが
学校給食施設使い適温提供
愛媛県西予市(人口約3万7千人)は2018年7月、西日本豪雨による肱(ひじ)川の氾濫で一時、最大約900人が避難所に身を寄せました。市は菓子パン、おにぎりという当初の食事を短期間で脱し、学校給食施設などの活用で、栄養バランスに配慮した食事を実現しました。そのとりくみは―。(西口友紀恵)
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肱川が氾濫したのは7月7日の朝。住民は浸水を免れた小・中学校と公民館の3カ所に避難しました。
同市の管理栄養士、松田美加子さんによると、当日夜は公民館で炊き出しを行い、避難者約200人全員にカレーを提供しました。
翌日からは市が用意したおにぎりと菓子パンに加え、夕食は中学校に保管していた給食用食材で調理した食事を提供。4日目の夕食から10日間は地元の農産加工グループに昼食、夕食のおかずを発注し、特に朝食時の栄養の偏りを補えるようにしました。
市防災計画に明記
学校が夏休みに入るのを前に、市の「地域防災計画」に従って給食施設の活用へ準備を急ぎました。「計画」には「炊き出しには公民館や学校等の既存施設を利用する」と盛り込んでいます。
栄養教諭、調理員、給食センター長、市の管理栄養士などが役割分担し、給食づくりを担当しました。
同月18日に避難所を1カ所に集約し、20日からの1カ月間、昼食・夕食各150食(朝食はパンと飲み物)を提供しました。献立はふだんの中学校給食を基に、主食・主菜・副菜・果物を組み合わせました。
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「地元の食材を使い、温かいものは温かく、塩分などにも配慮しました。高血圧や糖尿病などの持病のある人から体調がよくなったという声も聞かれた」と松田さん。「市や県の職員間で日ごろから顔の見える関係づくりができていたことが、今回のとりくみに生きた」といいます。
8月下旬の学校再開から避難所を閉めるまでの1カ月弱は地元の弁当店への発注で対応しました。
避難所の食事の費用には災害救助法で原材料費、弁当代、炊き出しの人件費などが含まれます。国基準は当時1日1人当たり1140円でした。
内閣府の防災担当は、従来から繰り返し自治体への通知で、長期化に対応し「メニューの多様化、温かい食事の提供、栄養バランスの確保、高齢者や病弱者に対する配慮等必要に応じて行う」ことを求めています。
基準額とらわれず
被災当時、救助費について内閣府の説明を受けた愛媛県の担当者は、基準額を超えた場合、「特別基準」の救助費として認めるので、丁寧に提供してくださいとの趣旨だったと話します。
「基準額にとらわれず必要なものは提供するとの考えで進めた」と同市福祉課の担当者。「年度末に市から県を通じて国に報告し、最終的にかかった食費約1450万円(約2万食分、1食あたり約700円)はほぼ全額が国から支払われている」と話します。
同市では、大規模災害に備え、建設中の給食センターを含め2学期から3施設で約4千食を賄える準備をしているといいます。