2020年2月24日(月)
拠出金増か支出削減か
EU予算規模で対立
【ベルリン=伊藤寿庸】欧州連合(EU)が次期中期予算(2021~27年)の編成方針をめぐって開いた首脳会議(20~21日)では、北欧・西欧諸国と南欧・東欧諸国との間で、予算規模などをめぐる深刻な対立が表面化しました。
英国のEU離脱によって大幅な収入減となるため、各国の拠出金の上積みをして補助金の水準を維持するか、拠出水準はそのままで支出削減で乗り切るかをめぐり、溝は埋まりませんでした。
南欧・東欧諸国は、農業や地域格差縮小のための多額の補助金に頼っており、その切り下げに反対。北欧・西欧諸国は、自国の負担の増える拠出金増額を阻止したいとしています。
首脳会議前に欧州委員会が提示した予算は1兆900億ユーロ(約132兆円)で国内総生産(GDP)の1・074%でした。特にスウェーデン、デンマーク、オランダ、オーストリアの4カ国は、EU予算はGDPの1%に抑えるべきだと強硬に主張。受取額の大きい東欧諸国などは同1・3%を主張しています。
昨年12月に発足した欧州委員会は、気候変動、安全保障、難民・移民対策などの新たな優先課題への予算増を計画しています。ポーランド、ハンガリーなど、強権政治で「法の支配」が脅かされている国には、補助金を削減する改革も検討されています。
しかし英国の離脱の余波が、EU本体をゆさぶる形で、打開の道は見えていません。
EU予算の資金源は、▽域外からの輸入に課される関税▽各加盟国の付加価値税(VAT、最低15%を義務付け)の一定割合▽加盟国の支払い能力に応じた拠出金―からなります。EU独自財源を増やすため、プラごみへの課税などの案も出ています。