2020年2月24日(月)
2020米大統領選
サンダース氏支える若者たち 民主党指名争い
医療保険、気候変動対策に共感
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【ラスベガス(米ネバダ州)=遠藤誠二】11月の米大統領選に向けた民主党候補者指名争いの3戦目となった22日の西部ネバダ州党員集会で、進歩派のバーニー・サンダース候補が圧勝しました。78歳という最高齢候補の選挙キャンペーンを支えるのは変革を求める若者たちです。
党員集会前日の21日夜。ラスベガス市内で開かれたサンダース候補の屋外集会には、約2000人の市民が詰めかけました。
気候変動対策の強化を主張するジャーナリストのナオミ・クライン氏や、フロリダ州パークランドの高校銃撃事件生存者で銃規制を訴えるキャメロン・カスキー氏、国民皆保険制度の実現を訴える全国看護師組合(NNU)のバーガー議長―。サンダース氏登場の前に、さまざまな支援者がマイクを握りました。
「1%の富裕層対99%の国民」の格差是正を柱に進歩的政策を数多く打ち出すサンダース氏に多くの有権者が熱い気持ちを抱きます。
最初にスピーチしたキャンペーン・ボランティアの青年は、いとこががんの疑いをもたれ、医療検査を受けただけで300ドル(約3万3500円)請求され、追加の検査や治療にばく大な金がかかる現実の前に愕然(がくぜん)とした経験談を披露。バーガー議長の「この国の医療保険は国民を傷つけていると思う人は手を挙げてください」との問いに、すべての集会参加者が挙手し、「変革が必要だ」「この選挙で勝つのは誰?」との呼び掛けには「バーニー」「バーニー」と唱和で答えました。
サンダース氏への青年の支持は他候補の追随を許しません。ゾグビー社が実施した30歳未満(18~29歳)を対象にした世論調査(1月19、20日)によると、32%はサンダース氏を支持。2位のバイデン前副大統領(16%)を大きく引き離しました。
最年少候補(38)のブティジェッジ候補(前インディアナ州サウスベンド市長)はわずか3%と対照的です。トランプ大統領と比較した世論調査でも、サンダース氏58対トランプ氏34と青年はサンダース氏を選んでいます。
同結果について、世論調査を分析する「ジョン・ゾグビー・ストラテジー」のジェレミー・ゾグビー氏は、「抑圧された若者の怒りが爆発したら選挙結果に大きな影響をもたらすことは歴史のなかで見てきている」と指摘します。
ネバダ州結果
温暖化や核兵器の脅威 若者に切実
「草の根運動の勝利」
21日夜に開かれたサンダース氏の集会の勢いは、党員集会にも表れました。ラスベガス南部のデザート・オアシス高校で行われた党員集会には、サンダース氏を支持する「バーニー・ピープル」が多数、集結。他候補支持者を数で圧倒しました。
討論でサンダース支持者の青年は、「気候変動対策や学費無料などを訴えるバーニーこそ、みんなを団結させてトランプ大統領を打ち破る候補だ」と断言しました。
米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは18日、「なぜ若者がサンダースを支持するのか」との記事を掲載。▽学生時代にリーマン・ショックで辛酸をなめた▽経済状況が改善した現在も所得が上がらず恩恵を受けていない▽移民出身者を含め非白人の割合が多くなっている▽気候変動を大きな問題ととらえている―などの理由をあげています。
党員集会に参加したセドナ・ファーレンさん(18、女子学生)は、「学生ローン帳消しなどバーニーの政策は他の候補がいわない、そして私たちが共感するものです」と語ります。
ボランティアとして参加したダニー・ニューマンさん(32、大学勤務)は、「地球温暖化や『世界終末時計』があと100秒と迫った核兵器の問題など、将来を考えた場合、より脅威と受け止めるのは青年たちです。だからみな、バーニーの政策を信じて支持すると思う」と話します。
22日夜、テキサス州サンアントニオを訪れたサンダース氏はネバダでの勝利宣言でこう述べました。「草の根の運動がネバダでの勝利に結びついた」「(私たちのたたかいは)これから米国中の選挙を圧倒する」
民主党の候補者指名争いは、進歩派候補が先頭に立つという過去にない状況のまま、前半戦最大のヤマ場となる3月3日の「スーパーチューズデー」(14州での予備選・党員集会)を迎えます。
■サンダース候補の政策
【医療】・国による一元的な国民皆医療保険制度
・医療費負債の免除
【教育】・教員給与引き上げ
・学生ローン負債帳消し
・公立大・カレッジ学費無料化
【住宅】・公的住宅の充実
・ホームレス根絶
【気候変動】・2030年までに温室効果ガス71%減/電力・輸送での再生可能エネルギー100%化
・パリ協定復帰
【移民】・メキシコ国境での壁建設中止
・特定の国からの入国禁止令廃止
【銃規制】・バックグラウンドチェック強化
・全米ライフル協会の政治介入禁止
【女性】・セクハラ、性差別、暴力の撲滅
・中絶の権利逆行の動き反対
【LGBT】・LGBT差別反対