2020年2月9日(日)
新型肺炎警鐘の医師死亡
言論の自由など権利制限に批判
中国政府、調査チーム現地に
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中国で、武漢市当局と中国政府の責任を問う声が数多く上がっています。早くから警鐘を鳴らしてきた医師が死亡し、言論の自由など権利を制限する政府への批判ともなっています。(小林拓也)
中国政府が新型ウイルスによる肺炎の発生を公表する前にインターネット上で肺炎を警告していた湖北省武漢市の医師、李文亮氏が7日未明、死亡しました。李氏は、武漢市当局が新型ウイルスによる肺炎発生を公表する前の昨年末、医師仲間のグループチャットで原因不明の肺炎を議論したことで「デマを流した」として地元警察から処分を受けていました。
李氏は、1月上旬から新型肺炎患者の治療に当たり、今月1日に中国版ツイッター「微博」で、自身も感染したと公表していました。
李氏は生前、「財新」のインタビューで、「健全な社会に必要なのはさまざまな声です。公権力を利用して過度に干渉されるのには同意できません」と言論統制を戒めていました。これを受け、ネット上では「この社会は健全ではない」などの書き込みも見られます。
ロイター通信によると、中国のSNS「微信」では、武漢の当局者を処罰するよう国務院に求めるネット署名を組織する動きも生まれているといいます。
たびたび中国共産党指導部を批判してきた清華大学の許章潤教授は4日、新型肺炎をめぐる政権の対応を厳しく批判する論文をネット上に投稿しました。許氏は「当初は口をつぐんで真実をごまかし、その後は責任をなすりつけ、感染拡大を防ぐ機会を逃した」と政府の対応を非難しました。
その上で、中国人民の権利の制限などが「社会の早期警戒メカニズムを弱らせ、失わせた」と述べ、政府の強権的手法が感染拡大の原因だと指摘。新型肺炎の隠蔽(いんぺい)を調査する独立調査委員会の設置を要求し、ネット規制の解禁、言論の自由、人権の尊重、普通選挙の実現などを求めました。
中国政府への不信感が広がり、警鐘を鳴らした医師が死亡する事態に、国家衛生健康委員会と武漢市政府などは7日、李氏の死去に哀悼の意を表明しました。公務員の腐敗を摘発する国家監察委員会は同日、警察が李氏らに訓戒処分を下したことに対する調査チームを武漢に派遣すると発表。8日に現地入りしました。