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2020年1月27日(月)

主張

気候危機と首相

非常事態と認識できないのか

 気候変動がもたらす地球の危機は、スイスのダボスで24日まで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で主要テーマになるなど、2020年年頭から国際社会で大議論になっています。今年は、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」が本格的に始動する年です。温室効果ガス排出の「実質ゼロ」に向けて、世界の取り組みが緊急性を増している中、この課題に背を向け続ける安倍晋三政権の重大な姿勢が一段と浮き彫りになっています。

人類の脅威に警告相次ぐ

 気候危機に対する深刻な警告が先週、相次いで出されました。

 一つは、国連のグテレス事務総長の国連本部での年頭演説(22日)です。21世紀を生きる人類が直面している脅威の一つに気候危機を挙げ、「気温上昇は記録を破り続けている」「われわれの惑星は燃えている」「後戻りできない地点にだんだん近づいている」と警鐘を鳴らし、温室効果ガスの主要排出国に主導的役割を求める内容です。

 もう一つは、米科学誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』が23日発表した「終末時計」です。地球最後の日までの残り時間を示す最新の時刻を「残り100秒」に設定したのです。1947年以来、史上最短です。その原因として科学者や政治家が記者会見で強調したのは、核兵器とともに地球温暖化の脅威の高まりです。気候変動をめぐり、人類が非常事態に直面していることは疑う余地はありません。

 先のダボス会議も、もともと世界の政財界トップらの会合ですが、昨年に続きスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの講演を設けました。気候危機打開を求める国際世論の反映です。

 パリ協定は今世紀末までの気温上昇を産業革命前より2度未満、深刻な打撃を回避するために、できれば1・5度以内にすることを掲げています。しかし、現在各国が国連に出している温室効果ガス削減目標を達成したとしても約3度上昇すると予想され、破局的事態を引き起こしかねません。各国が削減目標の大幅引き上げに踏み出すことがなにより急務です。

 50年までに温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にするための戦略をまとめる国は、75カ国にのぼります。この流れをさらに加速することが不可欠です。

 ところが安倍首相には切迫した事態について認識がありません。20日の施政方針演説では、世界の水準から大きく立ち遅れた「長期戦略」(50年度までに温室効果ガス80%削減)の実行などに触れただけです。日本共産党の山下芳生副委員長が24日の参院本会議の代表質問で、50年までに「実質ゼロ」をめざし、その実現のために30年の削減目標を引き上げる戦略の策定に取り組むことを求めても、首相はこたえようとしません。

石炭火力への固執やめよ

 安倍政権は、二酸化炭素を出し続ける石炭火力発電所の新増設を推進する政策も変える姿勢がありません。国連環境計画(UNEP)は、日本に石炭火力発電所の建設をやめ、既存の同発電所を停止する日程表をつくるよう勧告しています。山下氏は代表質問で、この勧告に応じ、建設の中止を迫りました。世界の流れに逆らう政治を転換することが、極めて重要になっています。


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