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2020年1月25日(土)

世界の流れに立ち希望わく政治に

山下副委員長の代表質問

参院本会議

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(写真)質問する山下芳生副委員長=24日、参院本会議

 日本共産党の山下芳生副委員長は24日の参院本会議で代表質問に立ち、究極の「使い捨て」労働であるフリーランスの拡大、沖縄での米軍新基地建設や対米・対中外交、気候変動で、安倍内閣の姿勢を追及しました。国民の声に応えて、「世界の流れにたち、国民に希望がわいてくる新しい政治を、市民と野党の共闘で切り開く」と強調しました。

雇用

“正社員当たり前”こそ

 安倍首相は施政方針演説(20日)で「多様で柔軟な働き方を可能にする」として、個人事業主など雇用関係によらない「フリーランス」の働き方を広げようとする安倍内閣の姿勢を改めて示しました。内閣府の調査では、フリーランスはすでに300万人(全就業者の5%)にのぼり、なかでも特定企業に依存している人が増加傾向としています。

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 山下氏は、フリーランスは「雇用関係がない」ために、最低賃金も適用されず、企業が自由勝手に解雇できるなど労働者の権利が全く保障されていないと指摘。こうした「究極の使い捨て」労働が、日本でもアマゾンやウーバーイーツの宅配代行業務などで広がっていることを示し、「安倍政権がやろうとしているのは、実態は労働者でありながら『非正規雇用』ですらない労働者を増やすことではないのか」と迫りました。

 安倍首相は、フリーランスの働き方について「実態を把握・整理し、全世代型社会保障検討会議の最終報告に向けて検討を進める」と述べました。

 自民党政権は労働法制の規制緩和で、労働者に不安定雇用や長時間労働を強いる政治を進めてきました。安倍政権も2018年に「働き方改革一括法」を強行し、労働者の労働時間規制を取り払う「残業代ゼロ制度」を導入するなど労働法制を改悪しました。

 山下氏は、人間らしい労働(ディーセントワーク)の実現は世界の大きな流れだと指摘。「『働き方改革』と言いながら、それに反する働かせ方を増やすことなどあってはならない」と強調し、雇用は正社員が当たり前というルールをつくり、残業代ゼロ制度を廃止して長時間労働を是正するよう求めました。

沖縄

辺野古新基地断念迫る

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(写真)海底に軟弱地盤がひろがる大浦湾=沖縄県名護市(小型無人機で撮影)

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設を強行する安倍政権に対し、山下氏は県民の圧倒的反対の民意をつきつけ、断念を迫りました。

 政府は昨年末、新基地建設の当初の計画を見直し、完成までの期間を約12年、費用を約9300億円としました。埋め立て予定海域に広がる超軟弱地盤の改良工事を余儀なくされ、工期も費用も膨張しましたが、山下氏は「これで済む保証はまったくない」と指摘しました。

 政府が見直した計画は、沖縄県に地盤改良のための設計変更を申請し、玉城デニー知事から承認を得ることが前提です。山下氏は、新基地反対の強い民意に沿い、“辺野古に新しい基地は絶対に造らせない”と訴えるデニー知事の決意を紹介し、「やみくもに土砂を投入しても、新基地を完成させる展望などない。政治的にも技術的にも完全に行き詰まっている」と強調しました。

 安倍首相は「着実に工事を進めていく」とし、そのことが米軍普天間基地(宜野湾市)の返還と危険性除去につながると強弁。民意を踏みにじる新基地建設に固執しました。

 山下氏は、政府が普天間基地の「一日も早い返還」を口実に新基地建設を強行してきたものの、1996年の日米両政府による普天間基地の返還合意からすでに四半世紀になると指摘。返還が実現しないのは「代替の基地をあくまで沖縄県内に求め、普天間と辺野古をリンクさせてきたからにほかならない」と断じました。

 山下氏は、“世界一危険”といわれる普天間基地を「いつまで県民に押しつけるのか」と迫り、普天間基地を即時閉鎖・撤去し、新基地建設を断念すべきだと求めました。

外交

対米・対中 姿勢ただす

 自らの外交政策を自画自賛する安倍晋三首相に対し、山下氏は、対米・対中外交について姿勢をただしました。

 在日米軍駐留経費を日本が負担することは、日米安保条約や日米地位協定にさえ反するものだと指摘。トランプ米大統領から求められている駐留経費の増額要求を拒否すべきだとただしました。安倍首相は「日米両政府の合意に基づき適切に分担されている」などと正当化しました。

 対中外交について山下氏は、二つの問題点を追及しました。

 第一は、中国公船が尖閣諸島周辺で領海侵犯などを激増・常態化させている問題です。

 山下氏が、2019年中の接続水域への入域が前年の1・8倍で過去最高となっていると告発すると、自民党席からもどよめきが。さらに、日本が実効支配する地域を力によって現状変更を迫る行動は、国連憲章違反であり、「日本共産党は強く抗議し、是正を求める」と表明すると、自民党席からも「その通り」の声や拍手が起こりました。

 第二は、香港における人権侵害の深刻化です。山下氏は、その責任は香港政府、中国政府の側にあると指摘。中国政府が国際的な批判に「内政干渉」と一顧だにしない姿勢を示しているとして、「人権を擁護し発展させることは国際的な課題だ」と強調しました。

 山下氏は、安倍首相が昨年12月、習近平国家主席らと会談した際、この二つの問題で「憂慮する」と述べただけで、抗議もせず、是正・中止も求めていないとして、「抗議しない情けない外交でいいのか」とただしました。

 安倍首相は、尖閣問題では「対応を強く求めた」「毅然(きぜん)と対応する」と語るだけ。香港問題でも「すべての関係者による自制と早期収拾を求めた」と述べるだけ。いずれの問題でも抗議する考えや、中止・是正を求める姿勢は最後まで示しませんでした。

気候危機

温室ガス「ゼロ」戦略を

 猛威を振るう風水害、熱波、多発する山火事―。山下氏は、地球規模の「気候危機」に対し、「一刻も早い対応が迫られる状況に人類は直面している」と述べ、世界の流れに逆行する日本政府の責任をただしました。

 山下氏は、二酸化炭素を排出し続ける石炭火力発電所を、国内で22カ所も建設・計画している問題を追及。石炭火発の建設をやめるよう求めた国連環境計画(UNEP)の勧告に触れ、「建設中止を決断しないのか」と迫りました。

 政府が石炭火発の輸出を成長戦略に位置づけている問題についても「地球環境を壊し、世界の持続可能な発展を破壊する『成長戦略』などありえない。石炭火力の輸出は中止すべきだ」と求めました。

 安倍首相は「わが国の高効率の石炭火力発電に対するニーズがあれば導入を支援する」などと答弁。石炭火力からの脱却にむかう世界の流れに反し、建設も輸出も進める考えを示しました。

 山下氏はさらに、2050年までに温室効果ガスの排出量「実質ゼロ」をめざす戦略づくりを求めました。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書(18年公表)は、温室効果ガスの排出量を50年には実質ゼロにする必要があるとしています。実質ゼロ実現の戦略を今年中にまとめるとしている国は75カ国。しかし日本は50年までに「80%削減」という主要国で最低レベルの目標のままです。

 山下氏は、国連の要請に応え50年までに実質ゼロをめざし、実現のために30年削減目標を引き上げるなど「ゼロ」戦略の立案に直ちに取り組むべきだと求めました。

 安倍首相は、「どんな野心的な目標を掲げても、掲げるだけでは意味はない」などとはぐらかし、「実質ゼロ」や削減目標引き上げは語りませんでした。


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